2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520389
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岡本 公一 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (60288024)
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Keywords | 日本近代史 / 植民地統治 / 台湾 / 朝鮮 / フィリピン / アメリカ / コロニアリズム / 比較歴史学 |
Research Abstract |
2006年度は、本プロジェクトの最終年であり、4年間の研究を総括するととともに、来年度ハーバード大学燕京研究所での在外研究を行う機会を得たため、その準備を行う年ともなった。 近年日本における植民地(主義)の比較の重要性が従来に増して、強調されるようになったが、それは日本の統治する植民地、「外地」間の比較を意図するものがほとんどである。日本と、それ以外の国との比較を視野に入れた研究は、植民地統治が切実な問題として存在した戦前・戦中期より、大きな進展を見せていていないといっても過言ではないであろう。 過去4年間の研究を通して、植民地主義の性格を最も典型的に示すのは、植民地における官僚制、司法制度を如何に構築するのか、あるいはその制度の運用において見出せた。そこで、台湾、朝鮮、フィリピンにおける植民地官僚制の成立に関して、その歴史的・思想的背景を考察した。アメリカにおいて、1900年前後にまとめられた、数多くの植民地制度に関する研究を参照しながら、日本の植民地官制を、世界史的脈絡に位置づける作業も同時並行して行ってきた。また、2007年3月にはアメリカ議会図書館、国立公文書館に出張、Philippine Civil Service Boardによる年次報告書を体系的に通読し、実際に官僚制がどの様に運用され、そして修正が加えられていったのか、詳細に分析できた。 また、宗主国の憲法体制の中に植民地を如何に位置づけるかとの問題に関して、1900年前後のアメリカでの議論、日本では、台湾統治に関する所謂「六三法」の成立過程との比較を行った。 この過程を通して、従来強調される傾向があった日本植民地主義の特殊性よりも、二〇世紀初頭における植民地主義が共有する性格を多く見出すとともに、今後は、比較という枠組みを脱し、トランス・ナショナルという視角から、相互作用・相関関係について研究を進めたい。
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