2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本と韓国:思想の断絶と交錯-近代性、植民地性、脱植民地主義と関わって
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15520390
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
尹 健次 神奈川大学, 外国語学部, 教授 (90175670)
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Keywords | 日本 / 韓国 / 思想 / 日韓関係 / 近代性 / 植民地性 / 脱植民地主義 / 植民地近代 |
Research Abstract |
本年度は研究の最終年度であったが、前年度の研究の進展をふまえて、韓国の研究者との交流に力を入れ、また研究成果の発表に向けた準備をすすめた。私費も含めていくつかの学会に出席し、また研究会その他でかなり意見の交換をした。韓国では今年度、盧武鉉政権による過去の清算がすすめられ、政界・学界・論壇を含めて大きな社会的イシューとなった。ひるがえって日本では小泉首相の靖国参拝が国内外に大きな波紋をよび、中国・韓国との外交が実質的に中断状態になるほどであった。この研究がめざす日本と韓国の思想的比較でも重大な関心事とならざるをえないもので、その点で、今年度は時事的な問題にひとつの焦点を当てることになった。 実際、今年度に発表した研究成果は、「帝国化のプロセスと日本・東アジア」「日本社会 アジアからの視座」「<自己>と<他者>-植民地主義が生んだ、戦後日本の"病"」「反省しない暴走機関車日本」と、その多くが現実の問題と深くかかわるものであった。 韓国の学界では、今年度も植民地期の研究が活発であり、そこで親日派の問題やそれと関連する近代性、植民地性、脱植民地主義の問題がかなり論じられた。東亜協同体論の評価や親日派追及の是非が、韓国政界の動きと連動するかたちで進行し、新聞などでの評価、学界でのシンポジウムのあいつぐ開催など、筆者にとっても現実と学問研究の並進という意味でたいへん刺激になった。 そうしたこともあって、今年度は、研究の全体性をふまえつつ、近代性、植民地性、脱植民地主義の問題設定と関連して、問題の本質をかなり明確に把握できたのではないかと思う。ナショナリズムと植民地支配、記憶と歴史認識、朝鮮半島と日本の<帝国>関係、日常性と政治意識、その他、日本と韓国の思想史的研究、比較史研究の重要な論点をあらためて確認できた思いである。 今年度の研究成果をふまえて、またこれまでの蓄積をふまえて、いよいよ研究成果の作成にとりかかることになる。その準備はすでにかなりできており、いまや具体的に執筆作業を始めながら、まとめていこうと思っている。 いまのところ、執筆には約1年かかると予想され、おそらく300頁くらいの本として出版することを考えている。わたし個人にとっても、その出版は、つぎの研究課題にすすむひとつの跳躍台になると思っている。
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Research Products
(4 results)