2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520393
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
荻野 富士夫 小樽商科大学, 商学部, 教授 (30152408)
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Keywords | 文部省学生科 / 学生科・思想局・教学局 / 国民精神文化研究所 / 学生主事・生徒主事 / 思想取締・思想善導・思想動員 / 数学錬成 / 日本精神・国体明徴 / 大東亜教学体制 |
Research Abstract |
かつて検討したことのある1920年代前半から1930年代前半の文部省の思想取締を、再検証することから本課題を開始した。すなわち、20年代前半の岡田文相時代の社会科学研究会の抑圧にはじまり、28年の三・一五事件後の学生課の創設、四・一六事件後の学生部への拡充、各大学・高校への学生主事・生徒主事の設置とそれらの運用状況を、ここ10年ほどの間に集めていた史料を用いて補強するとともに、いくつかの新たな論点を付け加えることにした。そのうち最も大きいのは、治安維持法研究などを通じて得た「転向」の問題などである。 それらと並行して、本課題の主要部となる1930年代後半の思想動員から「教学錬成」につづく段階の史料の収集に努めた。なかでも最大の収穫は、国立教育政策研究所図書館所蔵の「河村文庫」「志水文庫」であった。前者の一部はかつて調査したことがあったが、今回前後の時期に広げることで、見落としていた史料を集めることができた。後者は国民精神文化研究所の所員ということで、特に30年代後半の研究所の実態に迫りうる貴重な史料を集めることができた。また、同図書館の「戦後教育資料」をみるなかで、戦前文部省の思想統制の論理と人脈が戦後のそれらに継承されていくという新たな論点に気づいた。この点は、来年度以降の課題として発展させていきたい。 また、昨年度までの科研費基盤研究課題の「「大東亜治安体制」の構造と実態」を通じて得た知見により、植民地・「満洲国」・占領地における文教機関の思想統制や思想動員の問題への広がりについても、考えを深めることに努めた。これも来年度からの課題である。 本年度は既発表論文の手直しと、史料収集に大部分の時間を費やしたため、新たな論文を発表することはできなかった。
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