2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520393
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Research Institution | Otaru University of Commerce |
Principal Investigator |
荻野 富士夫 小樽商科大学, 商学部, 教授 (30152408)
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Keywords | 学生課・学生部・思想局・教学局 / 国民精神文化研究所 / 思想対策協議委員・教学刷新評議会 / 長野県教員赤化事件 / 滝川事件 / 美濃部達吉・天皇機関説問題 / 伊東延吉 / 学生主事・生徒主事 |
Research Abstract |
本年度は国立教育政策研究所・野間教育研究所・東大教育学部図書室における史料の収集を積極的におこなうとともに、それらを加えて全体の構想を検討しつつ、前半部分の文章化を進めた。すでに二〇年ほど前に二つの論文を公表していたが、まずそれらを現在の視点と新史料を追加しながら、加筆した。第一章は「思想統制の始動」と題して、1920年代前半の高校における社会科学研究の抑圧を中心に、第二章は「思想統制体制の確立」とし、1920年代後半、文部省思想取締の中枢部となる学生課の設置から学生部への拡充を概観している。 第三章以下が、本課題の中心であり、現時点でまとまった部分は以下のような構成となる。 第三章 思想統制体制の展開-学生部の機能全開 一 学生思想運動との全面的対決 二 学生運動の逼塞化 第四章 思想動員体制への移行-思想局の活動 一 文部省への逆風 二 思想局の対策と施設 三 「国体明徴」「日本精神」の高唱 各節とも数項に分かれている。それぞれ1930年代の前半と中葉を時期範囲とし、学生思想運動にとどまらず、小学校教員組合運動の取締、国民精神文化研究所の創設、「思想善導」と「転向」誘導方策にも視野を広げ、長野県教員赤化事件・滝川事件・天皇機関説問題などにも新たな史料を発掘して検討を加えた。また、文部省のなかにおける思想統制機能の増殖過程にも関心を寄せ、思想対策協議委員や教学刷新評議会についても論及している。学生部長から思想局長として、この時期を通じて文部省の思想統制をリードする伊東延吉の言動にも注目した。学生思想運動を逼塞させたあと、「国体明徴」『日本精神闡明』が文教行政の軸となっていく経緯は、1930年代後半につながるものとして重視している。 来年度は「第五章 「教学錬成」体制への転換」「第六章 「教学錬成」体制の究極化」「第七章 戦後教育への断絶と連続」という構想にしたがって、ひきつづき史料収集と執筆にあたる予定である。
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