2004 Fiscal Year Annual Research Report
1605年に長崎で出版された典礼書『サカラメンタ提要』に記された楽譜の印刷工程
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15520406
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
竹井 成美 宮崎大学, 教育文化学部, 教授 (00141838)
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Keywords | サカラメンタ提要 / グレゴリオ聖歌 / グーテンベルクの活版印刷機 / キリシタン版 |
Research Abstract |
1605年に長崎で出版された典礼書『サカラメンタ提要』の中に印刷された2色刷りの19曲のグレゴリオ聖歌。譜線は朱色で五線であるが、よく見ると16ミリほどの間隔で切れ目があり、鋳造された譜線用活字を横に組み合わせて五線がまず印刷されているのが判明する。一方、音符は黒色であるが、その形は、ゴツゴツした旗のようであったり、ひし形のようであったりする単独符と、いくつかが組み合わされた、いわゆる連結符であったりする。朱色の譜線に対して、音符が線上と線間に間違いなく印刷されるようにスペース(インテル;行間に詰めるもの)が用いられながら組版されていることが判明する。当時のヨーロッパでは、すでに楽譜印刷には、譜線と音符が一体型の活字が用いられていることからすると、『サカラメンタ提要』には、むしろ煩雑な初期の二重式印刷が用いられていることが判明する。 しかも、19曲をひとつずつ調べてみると、1曲目の「Subvenite sancti Dei」は、何ケ所かの印刷ミスと思われる箇所が判明する。日本で初めて印刷される楽譜のため、いわゆる植字に手間取った跡と読み取ることができよう。 また、その中の1曲「Tantum ergo」は、当時のスペインとポルトガルでしか歌われていない、いわばローカル聖歌であることも判明する。その証拠に、当時のスペインの作曲家の多くが、ローマで用いられていた正当的な旋律と違う、そのローカル聖歌の旋律をテーマとした器楽曲や合唱曲を書いているのである。 1605年と言えば江戸初期。伊東マンショたちが持ち帰ったグーテンベルクの活版印刷機で印刷されたことを思うと、2005年という節目にそれを解読し・証明するレクチャーコンサート(『伊東マンショの西洋音楽行脚』/3月19日/宮崎県立芸術劇場演劇ホール)を開催することができた事は意義あるものと考える。
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Research Products
(2 results)