2004 Fiscal Year Annual Research Report
異宗教間の交渉と王権との関係についての比較史的考察
Project/Area Number |
15520416
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
本郷 真紹 立命館大学, 文学部, 教授 (70202306)
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Keywords | 宗教間の交渉 / 王権と宗教 |
Research Abstract |
今年度前半期は、前年度より継続して、西洋における異宗教間の交渉、具体的には、キリスト教の伝わる以前のケルトの宗教と、これに融合する形で新しい地域に入り込んだキリスト教との関係について、初期キリスト教の宣教師が書き残した文献に見られるケルトの神々についての伝承等を材料として分析を試み、日本の神話との共通点や、中国・韓半島諸国および日本に於ける仏教伝来過程での在地の信仰との融合について考察した。原理的には一神教の形態をとるキリスト教ではあるが、とりわけ在来の信仰との融合を経てそれぞれの地域的な特色を生み出したカソリックの信仰には、アニミズム的な、自然の構成物を神格化した在来の神々を、精霊或いはキリストに縁のある聖者として受け容れることで旧来の信仰を温存し、これを媒介としながら教線を拡大したことが窺われる要素が、数多く残されている。さらに、今回調査を行ったイングランド西部やアイルランド等の地域では、輪廻転生の観念すら存在し、独自の前世・来世観が形成されていることが、古伝承或いは遺跡・遺物より確認される。このような特色は、洋の東西を問わず、四季の存する地域に共通する、風土的な要素が強く影響を及ぼしていると考えられ、文化の発展段階の一形態として受け止めうるものと言うことができる。 後半期は、如上の考察を踏まえた上で、改めて日本の神仏混淆から習合に至る過程と、各段階に於ける特質について分析を行い、古代国家・王権との関係に即して、考察を試みた。神祇信仰に依拠する日本の王権に関しては、特にその宗教的権威の問題から、仏教との直接の接触、これを受容し自らの信仰対象として受け容れる過程に於いて、種々の新たな解釈が試みられたことが窺われるが、このような動向もまた、世界の他の地域にも見出され、共通の史的意義を想定することが可能となる。
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