2003 Fiscal Year Annual Research Report
族譜および書簡・筆記史料から見た宋代の宗族と地域社会に関する動態的研究
Project/Area Number |
15520430
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
遠藤 隆俊 高知大学, 教育学部, 助教授 (00261561)
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Keywords | 過庭録 / 蘇州 / 范氏 / 宗族 / 移住 / 家 / モデル / 宋代 |
Research Abstract |
1.本年度は主として当該研究課題についての史料蒐集および分析に力を注いだ。まずはは四庫全書のCD-ROM版を購入し、蘇州范氏に関する記事の検索を実行した。とくに『過庭録』と呼ばれる南宋の筆記史料から范氏関係の記事を抜き出し、これに翻訳を加えながらパソコンに収録した。また、大阪大学にある明清地方志関係資料をはじめ、京都大学、大阪市立大学、広島大学、九州大学にある宋代史関係の文集や史料を調査し、その一部を筆写および複写した。さらに中国河南省洛陽市にある蘇州范氏の墓を調査し、当地に残されている宋代以来の碑文や遺跡をビデオカメラに収めて分析の基礎史料とした。 2.分析内容については、まず1980年代以降の日本における宋代宗族史研究を概観し、これを4つの分野に分けて整理した。第1は「唐宋変革論と士大夫研究」、第2は「宗族制度と思想史研究」、第3は「地域社会史研究」、第4は「家、家族と宗族」である。そして、日本の宗族史研究の特徴には次の3つがあることを論じた。1つは生成論的研究、2つめは長い時間軸での研究、3つめは歴史学と思想史、文学史、社会学、人類学との連係である。さらに日本の研究に足りない点としては家の研究や女性史、ジェンダーの視角、中国以外の地域との比較研究であることを指摘した。以上の点については、2003年8月に高知県で開かれたシンポジウム「中国宋明時代の宗族」および中国の安徽大学歴史系、揚州大学社会発展学院の講義において口頭報告した。 3.宋代の宗族と地域社会の問題に関しては、これを「移住」という視点から考察し、蘇州范氏の宗族形成と移住の関係を5つの時期に分けて分析した。第1期は唐末五代宋初、第2期は宋代中後期、第3期は両宋交替期、第4期は南宋中後期、第5期は宋末元代である。第1期は范氏が華北から蘇州へ移住してきた時期で、宗族モデル形成の揺籃期。第2期は彼らの一部が蘇州から華北へ移住し、郷里に義荘を設けるという宗族モデルの形成期。第3期は金朝の南侵によって華北の族人が南へ移住し、蘇州そのものも壊滅的な打撃を受けた、宗族モデルの崩壊期。第4期はその中から蘇州の復興と定住がなり、宗族モデルが再編された時期。第5期は彼らの一部が再度華北に向かって交流を始め、モデルが拡大発展する時期である。この点については2003年8月に韓国で開かれた国際学会、および広島大学で開かれた第70回宋代史談話会の席上で口頭報告した。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 遠藤隆俊: "北宋士大夫の日常生活と宗族(原文は韓国語)"中国史研究(韓国、中国史学会). 第27輯. 33-48 (2003)
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[Publications] 遠藤隆俊: "宋代的士大夫与家族、宗族"中国社会歴史評論(中国、南開大学). 第5輯(未詳). (2003)
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[Publications] 遠藤隆俊: "日本宋代宗族史研究之現状与課題"安大史学(中国、安徽大学). 第1号(未詳). (2004)