2004 Fiscal Year Annual Research Report
数値史料の電算処理にもとづく明末・財政官僚の施策の合理性に関する基礎研究
Project/Area Number |
15520431
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Research Institution | Kochi Univercitv |
Principal Investigator |
吉尾 寛 高知大学, 人文学部, 教授 (40158390)
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Keywords | 中国史 / 財政史 / 畢自厳 / 度支奏議 / 明朝 / 李自成の乱 / 数値 / 档案 |
Research Abstract |
1.史料の調査(明末の戸部尚書畢自厳に関する史料の調査) 中国(平成16年8月):北京・北京大学図書館において、目本の研究機関に所蔵されていない畢自厳の著作『戸部題名』不分巻等を閲覧し、本研究の主要史料である『度支奏議』所収の奏疏との重複等を含めて、内容を確認した。 2.研究成果の報告 (1)中国:中国明史学会主催「第十届明史学術討論会」(2004年8月21日-25日南京・中山陵園)に出席し、前年度の成果をふまえた本研究に関わる報告を行なった。期間中、台湾東呉大学歴史系・徐泓教授、香港城市大学中国文化中心・卜永堅講師等から、台湾・香港における『度支奏議』の研究ないし取り扱いの特徴について最新の情報を得た。殊に卜永堅氏からは後日、香港城市大学所蔵の『戸部題名』の複写の提供を受けた。 (2)日本:第21回四国東洋学研究者会議(2004年10月23日-24日高知大学及び高知県・国民宿舎「海風荘」)において、四国在住の中国史研究者十数名、並びに高知大学姉妹校の中国・安徽大学歴史系の2教授の参加を得て、本研究に関わる中国史の諸問題、中国の研究動向(とくに安徽の経済史研究)についての研究会を開催した。また、「2004年度東洋史研究会大会」(2004年11月3日京大会館講演室)において、「『度支奏議』と明末の流賊反乱」と題して報告を行い、席上、参加された先生方より貴重なご意見を頂戴した。 3.史料の分析(畢自厳撰『度支奏議』を中心にして) 今年度は、主として、特定地域に対する国家財政の運営方法をめぐって明末の戸部官僚畢自厳の施策に関して考察した。その結果、当時の財政運営の中で、項目間・地域間の相殺決済ともいうべき処理、例えば、対満州軍用の兵餉(「新餉」)と辺防一般用の兵餉(「旧餉」)、辺境地(陜西)と内地(四川省等)の間の兵餉銀の相殺決済が頻繁に行われていた事実、及びかかる決済の行き詰まり(一方の大量未収等)が当時の財政問題の重要部分をなしていたことが明らかになった。
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