2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520435
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
近藤 一成 早稲田大学, 文学部, 教授 (90139501)
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Keywords | 中国史 / 出土文書 / 宋代 / 黒水城文書 / カズロフ / 廷安府 / 金湯城 / 牒 |
Research Abstract |
本年は、カズロフ将来黒水城文書中、陝西の延安に置かれた経略安撫使指揮下の軍政文書109葉のうち、宣和7年(1125)の年号をもつ軍糧支給の不正受領をめぐる裁判案件に関係した文書5葉の訳注を作成した。 研究代表者は、本文書が公開され日本での検討が可能となった2002年から、本軍政文書を大学院の演習のテキストに採用し、とくに事件の舞台となった保安軍金湯城と安撫使治所の廷安府との間で遣り取りされた文書を対象に基礎的な検討を行った。これらは、断片過ぎて完全には関係文書と同定できないものを含め約41葉確認できるが、このうち文書の発信者と宛名人が明確であり、辺境での軍事裁判の経過が比較的詳細に検証できる5葉を本年度のテキストとした。 公関された写真は鮮明であるが、原文書の形状や保存状況から文字の判読、文章の移録と読解は非常に困難で、演習では各葉の担当者を決め、まず正確な移録及びたたき台としての訳注の提出を課し、最終的に研究代表者が整理し、まとめるという形で試訳を作成した。中国では昨年、この軍政文書を扱った論考が、管見の限り既に2、3編発表されているが、文書の内容にまで踏み込んだ考察は未だないように思われる。そこで一部分ではあるが、世界で初めて訳注稿として印刷公刊するにあたり、文書全体の内容に関する序言を付し、本文書の意義や史料としての可能性を概観した。当面は訳注稿という形をとらざるを得ないが、北宋の紀年をもつ行政文書の出現は稀有のことであり、1次史料に関して著しく見劣りのする宋代史研究に一石を投じ得たと考えている。
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Research Products
(1 results)