2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520442
|
Research Institution | Nagano National College of Technology |
Principal Investigator |
久保田 和男 長野工業高等専門学校, 一般科, 助教授 (60311023)
|
Keywords | 首都 / 行幸 / 空間 / 市民 / 政治 / 畋猟 / 儀礼 / 祥瑞 |
Research Abstract |
平成17年度は,徽宗時代と開封の首都機能の変化についての論文を世に問うことができた。また,中国語で発表した,城壁を言説分析という方法で論じた論考を,改めて日本語で発表した。平行して,北宋の皇帝の巡幸に関しての検討を,昨年に引き続き続行した。そのうえで,おもにアメリカの研究者の中日の研究者は違った視覚からの研究論文を参照しつつ,行幸の政治的な意味や首都空間との関係を,皇帝と首都住民との間のコミュニケーションの象徴的な意味などを検討していった。その中で問題となったのが,行幸における祥瑞の問題であり,今後の研究に有益な問題点の構築であったと考えている。以上の検討を,一本の論文にまとめたが,出版は2006年となる。行幸の問題を追及する過程で浮上した新たな問題が「畋猟」である。畋猟は,皇帝が首都の近郊で狩りを行うことによって武威を象徴的に内外にアピールするための儀礼的が国家行事であり,中国文明の発祥とともに記録されているものである。ところが,北宋の皇帝は畋猟を中止する。宋代ではその後行われなくなるのである。中国のルネッサンスといわれ,古代の学術に新たな展開を与えた宋代の文化の中で,古代の文明を否定することが行われていたことになる。この畋猟中止の意義について検討を開始した。この問題は宋代の政治文化の特徴を浮き彫りにするために格好の問題点のようである。『長編』を中心とする史料の読み込みによって新しい事実が次々と判明した。たとえば,太宗・真宗・仁宗は,それぞれ畋猟をやめており,畋猟中止の事情はそれぞれの皇帝によって異なるということである。太宗・真宗は,契丹との国際関係と関連して,畋猟が中止されているようだ。とくに真宗は,道教信仰の深まりとともに畋猟すなわち殺生を廃している。この問題については,18年度前半に論文にまとめたい。
|
Research Products
(2 results)