2005 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期イングランドにおける宗教社会的ネットワークの研究
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15520444
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
新井 由紀夫 お茶の水女子大学, 大学院・人間文化研究科, 助教授 (30193056)
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Keywords | 中世史 / 免罪符 / 贖宥状 / イギリス / ジェントリ / 宗教社会的ネットワーク |
Research Abstract |
昨年度のリーズ国際学会で報告し、国際的研究者と討論・交流を重ねた結果、さらに贖宥状に関するケーススタディーを積み重ねることが必要であると判断し、今年度は大英図書館及びヨークシャ、リーズ・アーカイヴ所蔵の贖宥状史料を中心に調査・分析した。第一に、中部イングランドのジェントリであるペラムPelham家が受給した8通の贖宥状を中心に、ケーススタディを行った。受給者であるペラム家のfamily historyと受給の状況を関連させて分析し、とりわけ、国王ヘンリ4世・5世の宮廷官僚サークルや貴族社会における宗教社会的傾向が、当時の国王を取り巻く政治状況と呼応していたこと、従って当時の政治社会の動向を理解する上で、宮廷サークルの宗教社会的心性を研究することが必要不可欠であること明らかにすることができた。具体的には、Sir John Pelhamと、Henry Lord FitzHughが、同じく1412年に受給した2通の贖宥状を解析し、その背景となった両者を取り巻く政治社会的状況と関連づける分析を行った。こうして受給者の宗教社会的心性と、政治社会状況とを結びつけて検討することが可能になった。第二に、その成果を、国際中世学会議2005(リーズ大学、2005年7月13日)で口頭報告した(司会、ケンブリッジ大学前教授バリー・ドブソン氏)。中世後期イングランドにおける宗教社会的結合関係の具体的諸相とその特質を明らかにすることが本研究の目的であったが、ケーススタディーの積み重ねるなかで、今後とも本研究分野の可能性がおおいに期待できることを明らかにした。
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Research Products
(1 results)