2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520448
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
横山 良 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (30127873)
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Keywords | ポピュリズム / グリーンバック運動 / グレンジャー運動 / 労働騎士団 / 農民同盟 / フリーシルヴァー運動 |
Research Abstract |
研究代表者は、ここ数年来、アメリカ・ポピュリズムの基本綱領であるオマハ綱領の歴史的起源を解明することによって、アメリカ・ポピュリズムの全アメリカ史通貫的意味、少なくとも19世紀アメリカ史通貫的意味を探る作業に従事してきた。その結果、一昨年度までのオマハ綱領土地項目の歴史的起源を探る作業によって、19世紀前半のいわゆる「土地改革」運動がオマハ綱領土地項目の起源であることを突きとめ、土地獲得による賃金労働者の解放という19世紀アメリカ社会にまことに適合的なヴィジョンがそこには込められていたことを明らかにした。 このような成果をうけて、研究代表者は、昨年度からは、オマハ綱領金融項目の歴史的起源の開明に取り組んでいる。オマハ綱領金融項目の最大の特徴は、連邦政府が、商品作物や土地を担保に、低利で国民に融資するといういわゆる「支国庫プラン」を提起したことであった。このプランに表れた、国家による通貨・金融管理と国民への直接融資の構想を一般に「グリーンバッキズム」と呼ぶ。研究代表者は、昨年に引き続き、今年度もウィスコンシン歴史学協会図書館での史料調査も交えながら研究を進めた結果、オマハ綱領金融項目に表れたグリーンバッキズムの歴史的起源は、南北戦争前、1840年代アメリカ東部ニューヨークなどでエドワード・ケロッグなどを中心に提案された「国民安全基金」プランにあることを確認した。この成果を盛ったものが論文「アメリカ・ポピュリズムとグリーンバキズム」である。ケロッグは破産を経験した商人として、貧富の格差をもたらす根源が法外な利子にあるとして、国民経済の成長に適合的な利子率を保つ金融政策の責任主体を国家に求めたのであった。その国家が国民に金融政策の主体として結びつく具体的な形態が「国民安全基金」であった。ケロッグのこの構想は、低金利政策論、不換法貨(紙幣)論、相互転換公債論の三本立ての構想であったが、南北戦争後、農民、労働者、実業人など多様な社会層によって唱導されるなかで、取捨選択され、相互転換公債構想を削ぎ落とした形でオマハ綱領金融項目に流入したとの展望が得られた。その課程を具体的に明らかにすることが来年度以降の課題である。
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Research Products
(1 results)