2006 Fiscal Year Annual Research Report
古代ギリシア人のコミュニティに対する意識に関する通時的視点からの研究
Project/Area Number |
15520463
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Research Institution | Kamakura Women's University |
Principal Investigator |
長谷川 岳男 鎌倉女子大学, 児童学部, 准教授 (20308331)
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Keywords | ギリシア / コミュニティ / アイデンティティ / ポリス / エトノス / 神域 / アルカディア / スパルタ |
Research Abstract |
本年度は補助金交付の最終年度にあたるため、これまでの研究のまとめを行った。その詳細は研究成果報告書に譲り、ここでは本年度の活動に限定して報告する。ギリシア人がコミュニティに抱くアイデンティティの考察が本研究の主たるテーマであるが、ギリシア人にとってアイデンティティを感じするコミュニティとは何かという問題は、従来はプラトンやアリストテレスの伝統に従いポリスであることにあまり疑義が呈されていなかった。しかし特に1990年代以降、近代国民国家におけるエスニシティの可変性に関する議論をうけてギリシア史でも新たなアプローチが展開されるようになった。それらの研究成果を摂取して、ギリシア人にとって、ポリスやエトノスの上位に位置すると考えられていた集団である、地域(アルカディア、アカイア、イオニアなど)や民族(ドーリス人、イオニア人など)に関する意識の分析を行い、夏にはスパルタ人とともにラケダイモン人と呼ばれたペリオイコイのコミュニティがあった場所の調査のためにラコニア各地を廻った。これらの分析のなかで明らかになってきたことは、ただギリシア人内部のさまざまな位層にあると考えられるグループに対する分析とともに、「ギリシア人(ヘレネス)」というアイデンティティに対する彼らの認識をいかに捉えるかということ自体、自前のこととして従来の認識ではあまり掘り下げて分析することがなかったように思われた。しかしこの問題は決して看過されることではなく、本年度の分析から考察するにあたってマグナ・グラエキアや小アジアのギリシア人コミュニティのケースは有効なデータを提供すると考えられた。これらの展望も含め、本年度後半には2000年度に始まったこの研究の集大成をすすめ、研究報告書を作成した。
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Research Products
(2 results)