2006 Fiscal Year Annual Research Report
フランス・ファシズムの研究-1930年代フランス保守派政治地図の再構成-
Project/Area Number |
15520464
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
剣持 久木 静岡県立大学, 国際関係学部, 准教授 (60288503)
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Keywords | フランス・ファシズム / ラロック / 火の十字団 / アクシオン・フランセーズ / シャルル・モーラス / ジャック・ドリオ / 集合的記憶 / フランス人民党 |
Research Abstract |
平成18年度は前年度までの研究の仕上げを行った。1930年代後半のフランス保守派政治地図において重要な位置を占めていた、退役軍人ラロック中佐率いる「火の十字団」ならびにその合法的後身「フランス社会党」の研究を、元共産党幹部ジャック・ドリオが創設したフランス人民党や、ドレフュス事件以来の王党派右翼であるアクシオン・フランセーズなどとの位置関係を精査しつつ行った。その際、ドリオが1937年春に提唱した反人民戦線保守派大同団結の「自由戦線」へのラロックの対応や、1937年秋の王位継承者によるアクシオン・フランセーズ破門に際しての、総帥モーラスのラロック攻撃などの状況を、パリ国立公文書館所蔵資料ならびにパリ政治学院所蔵ラロック個人文書で詳細に調査した。その結果、ラロックの、極右はもちろん、保守派全体からも距離をとろうとする姿勢が明確になった。研究の方向性としては、同時代から戦後まで一貫して続く「ラロック=ファシズム」イメージと、実際のラロックの中道志向との乖離を明らかにすることになった。 研究成果の公表としては、平成18年4月に近現代史研究会(於:大正大学)、7月に関西フランス史研究会(於:京大会館)さらに9月には九州西洋史学会(於:九州大学)で、本研究課題の研究成果報告を行った。さらに、本研究成果の主要部分は、講談社選書メチエより『記憶のなかのファシズム』と題した単行本の形で刊行する予定である。そこでは、1930年代におけるフランス保守派地図のなかでのラロックの実際の位置と、(独り歩きすることになる)ファシズムイメージの乖離が主要テーマとなっている。 その際に、集合的記憶としてのファシズムイメージを説明する際に不可欠な画像資料を多数使用する。画像資料は、平成18年3月および9月の現地調査で、パリ政治学院所蔵のもの、ならびにラロック家(娘宅)に保存されているものを閲覧してきたが、使用、公表に際しての許可はすでにラロック家から得ている。
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Research Products
(1 results)