2005 Fiscal Year Annual Research Report
食とアイデンティティー-近代ヨーロッパにおける統合原理としての食文化-
Project/Area Number |
15520467
|
Research Institution | Kyoto Tachibana University |
Principal Investigator |
南 直人 京都橘大学, 文学部, 教授 (20181951)
|
Keywords | 食文化 / 食生活 / 国民統合 / 近代国家 / 料理書 |
Research Abstract |
本研究の目的は、食文化の歴史を材料として、19世紀ヨーロッパ社会の国民国家単位での統合について解明することである。1年目、2年目に収集した文献に基づいて、食生活に関する諸史料、とくに同時代の料理書などを分析し、その中にみられる国民国家的な統合のベクトルの有無やその表れを検討した。ドイツやフランスのような大国の場合は、なかなかそうした統合のベクトルが料理書の中に見いだすことは難しいが、ノルウェーやスロヴェニアのような国民国家形成が遅れた小国においては、料理書の中に統合のベクトルをかなり鮮明に見いだすことができた。そうした研究の一部、とくに研究の大まかな見取り図を、「食の歴史の可能性-ヨーロッパ近代社会史研究の視点から-」(『関学西洋史論集』)という表題の論文にまとめてみた。さらに、2005年9月20日〜25日にベルリンで開催された「ヨーロッパ食生活史研究のための国際委員会」の国際シンポジウムに参加し、ヨーロッパの食生活史研究の最前線にいるヨーロッパ各国の研究者から情報を収集した。このシンポジウムのテーマは「都市化の中の食」で、ちょうど19世紀後半から20世紀が対象であり、工業化や近代国家の成立と食に関わるいくつかの問題が扱われ、本研究のテーマとも関連する報告があった。さらに、ベルリンはトルコ系を中心とするイスラム教徒が多く居住しており、彼らの独自の食文化が展開されているが、このシンポジウムへの参加を通じて、こうした移民のアイデンティティが食においていかに表されているかを考える材料を得ることもできた。研究成果の報告書の中でこうした点にも触れてみたいと考えている。
|
Research Products
(1 results)