2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520468
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 きく代 関西学院大学, 文学部, 教授 (80207084)
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Keywords | 孤児列車 / 児童援助協会 / チャールズ・L・ブレイス / ナショナリズム / 慈善 / 救貧 / プレイシング・アウト / 農村委託 |
Research Abstract |
アメリカ合衆国において、1850年代の中頃から1920年代末にかけて、民間慈善団体は、東海岸の都市部で問題となっていた貧窮児童を救済する事業の一環として、こうした児童を西部の農村部の自営農民に委託する「孤児列車」を実施した。これは社会福祉においてプレイシング・アウトといわれる里親制度の始まりである。ニューヨーク児童援助協会の場合は、約80年間の間に、少なく見積もっても約20万人の子どもを西方へ移動させた。この孤児列車には、東部におけるアメリカ的な慈善観や家族観を西部に移植し、孤児を通してアメリカン・ナショナリズムの一体化を試みた側面がある。孤児列車を通してアメリカ合衆国の19世紀ナショナリズムの展開を検証することできるが、本年は孤児列車の全貌を検証する第一段階として、1854年から1917年までの年次報告書の分析を主体に、その人口動態的分析を行い、「19世紀後半における孤児列車の人口動態分析」『人文論究』に成果を発表した。また、西洋史学会のシンポジウム「革命・公共圏・性文化」で、19世紀の女性の連帯による社会的ネットワークについて報告したが、それは孤児列車活動などに従事した女性慈善家の公共圏へのかかわりを検証するものであり,その一部は,「ジャクソニアン期からアンテベラム期にみる女性の公的領域-参加的民主主義論からの射程」『人文論究』にまとめた。夏期には、海外調査地として、ニューヨークやボストンを取り上げ、ニューヨーク児童援助協会の年次報告書の他に、主としてボストン・ミッションとボストン児童援助協会の年次報告書を調査した。
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Research Products
(2 results)