2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520468
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
田中 きく代 関西学院大学, 文学部, 教授 (80207084)
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Keywords | 孤児列車 / アメリカン・ナショナリズム / 慈善 / 貧困問題 / 子ども労働力 / 里親制度 / 農村家庭への委託 / 児童援助協会 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀前半から20世紀初頭における、民間慈善団体による孤児救済事業を通して、子どもの救済や教育の実践とその理念の中に見られたアメリカン・ナショナリズムの特色を捉えようとするものである。19世紀の前半期は、アメリカ合衆国が市場革命、産業革命といった転換期を経験した時期であり、それは従来と異なるカトリック系の移民を大量に導引することになった。特にニューヨークにおける変革は著しく、それは貧困問題を引き起こした。 貧困の問題は、特に子どもに表れ、多くの貧窮する孤児たちが現出した。子どもを邪悪な存在としてではなく、愛他的な可塑的な存在とみなすような子ども観の誕生によって、こうした子どもを優れたアメリカ人に育てなければならないという社会改革的な理念が、慈善家たちによって実践された結果、多くの子どもを対象とする社会改革が19世紀の中ごろから実践されるようになったが、その中心的役割を担ったのが、ニューヨーク児童援助協会による「孤児列車」事業であり、それによって多くの貧窮児童が西部開拓の予備労働力として、西方の農村家庭に委託された。 本年度は、昨年に引き続き、この「孤児列車」について、19世紀中ごろから20世紀の20年代まで、年次報告書の分析による実態の把握に努めた。日本風俗史学会の研究会や、同志社大学の文化史学科の講演会などで、その概要を報告した。本年度の論文では、直接的に「孤児列車」を対象としたものをまとめる段階には至らなかったが、アメリカ合衆国におけるエスニック関係史に関する論文2篇と書評2篇を著し、19世紀から20世紀におけるアメリカン・ナショナリズムの特徴について考察した。
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Research Products
(4 results)