2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520469
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
中谷 功治 関西学院大学, 文学部, 教授 (30217749)
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Keywords | 中期ビザンツ帝国 / 軍制 / タグマ / 近衛連隊 / ドメスティコス / タグマタ |
Research Abstract |
まず,基礎となるデータ収集作業を実施して,プロソポグラフィー研究文献を手元に完備した。そして,各タグマ,あるいはその指揮官職であるドメスティコスごとに登場年代と活動の主な内容のリストを完成させた。その上で,主な史料である『テオファネスの年代記』などをもとに,時代ごとにタグマとその指揮官についてのより詳細で具体的な動向に関する徹底的な洗い出しをおこない,分析を加えた。ここからの結果として,後に「中央軍」とも呼ばれ,当時において国家の機軸となる軍事力である地方のテマ軍と対比されてきた皇帝直属の主力4騎兵連隊タグマのそれぞれの成立時期を特定した。すなわち,スコライ連隊とエクスクービテス連隊については8世紀中葉での再編が確実であること,ビグラ連隊については8世紀後半の成立あるいは再編の可能性が高く,4つ目のヒカナトイ隊については9世紀初頭のニケフォロス1世の治世に,ともかくもその編成がなされたことである。さらに,8世紀中葉から9世紀初頭にかけての年代記史料に登場するタグマならびにその指揮官の動向を分析すると,彼らの軍事活動はさほど目立ったものではなく,むしろタグマやその指揮官は首都の宮廷を中心とした陰謀やクーデタを通じて,帝国の中央における政治過程に深く関わっていた実情が明らかとなった。ここからは,この時期におけるタグマとは,帝国の軍隊の一翼を担う「中央軍」,つまり首都を防衛する最終的な決戦兵力というよりは,皇帝やあるいはそれを擁立しようとする勢力の手足となって活動する近衛連隊と呼ぶべき存在であることが判明した。
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