2004 Fiscal Year Annual Research Report
局部磨製石斧の実験的研究-後期旧石器時代の石斧の機能-
Project/Area Number |
15520480
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Research Institution | SAPPORO INTERNATIONAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
長崎 潤一 札幌国際大学, 人文学部, 教授 (70198307)
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Keywords | 後期旧石器時代 / 局部磨製石斧 / 実験的研究 / 使用痕 / 微細剥離痕 |
Research Abstract |
日本列島では後期旧石器時代前半期に局部磨製石斧が出土する。後期旧石器時代で、刃部を意図的に磨く石斧は、オーストラリアでは同時期に見られるものの、世界的にも珍しい。何故日本列島で後期旧石器時代に刃部磨製の石斧が盛行するのか、それに答えるためにはこの石器の機能を特定しなければならない。本研究はこの石器の機能推定に実験的手法アプローチしたものである。 石斧や礫器などの大形石器の機能推定実験はこれまであまり行なわれてこなかった。その理由は石斧が一般にやや軟質の石材を素材とするため、黒曜石や頁岩、チャートなどにできる使用光沢が観察できないためであった。本研究では石斧を製作し、研磨し、骨と木材に対して使用実験を行なった。使用した石斧の刃部を観察し、微細剥離痕、線状使用痕を観察した。 微細剥離痕は、石斧の使用方法や対象木材の硬度によって微細剥離の状態が異なることが観察された。石斧と対象物の衝突角によっても微細剥離の形状に違いが見られた。骨と木材とで、使用痕に違いがあるのかを観察では、若干の相違が認められた。ただし、木材の硬度によっても変異が見られ、実験例を更に増やして検討しなければならないだろう。 出土石斧は、岩宿文化資料館から全国各地の石斧のデジタル画像を提供してもらい、石斧刃部の観察例を増やことが出来た。出土石斧はやはり物理的風化、磨きなおしによる使用痕の消滅などが観察の障害となったが、線状痕や微細剥離痕に一定のパターンを見出すことが出来た。しかし対象物を個別に特定するためには更に高倍率の顕微鏡での観察が必要であろう。 実験で骨割りの作業と木材の加工では対象物と石斧刃部の衝突角度が異なることが確認された。本研究では実施できなかったが、石斧と礫器、礫による骨割り実験を実施して作業効率比較を行なえば、おそらく礫器、礫の方が効率的であることと予想される。
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