2003 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代鎖国前後の日本と海外諸国との交易についての考古学的研究
Project/Area Number |
15520488
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
松本 啓子 (財)大阪市文化財協会, 調査研究部, 主任学芸員 (20344377)
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Keywords | 近世史 / 考古学 / マジョリカ陶器 / 鎖国 / オランダ連合東インド会社 / 国際情報交換 / イタリア:フランス:ベルギー:オランダ / foglie文アルバレルロ形壷 |
Research Abstract |
17世紀の鎖国期の日本に輸入されたマジョリカ陶器の製作地を究明するために、平成15年度は、日本国内の出土例の確認と、マジョリカ陶器のヨーロッパにおける出発点であるイタリアでの類例の探索を行なった。国内の出土例は徳島城下町跡のアルバレルロ形壷を実見し、大阪城跡の出土品との実物同志の比較を行なうとともに、出土の背景の確認を行なった。結果、日本国内の流通は、やはり、限られたルートを動いている可能性が高いことを再確認した。また、比較資料として、日本からヨーロッパへ輸出するはずであった久留米城下町跡の出土品と、鎖国前に輸入された華南彩釉陶のトラディスカント壷とを、それぞれの輸出入の背景を確認し、マジョリカ陶器との比較を行なった。イタリアでは、大阪城跡出土品を持参し、同国製品との比較検討を行なうとともに、同国研究者と意見交換を行なった。結果、(1)foglie文(2色掛け分けの葉文)はヴェネツィア発祥の文様であること、(2)同様の文様は中部・北部イタリアでは16世紀代に汎用されていたこと、しかし(3)大阪城跡出土品と全く同じものは作られていないことなどが判明した。ただし、(4)大阪城跡出土品のようにカルシウム(Ca)分を多量に含む胎土を用いる手法は、イタリアにおいてはフィレンツェ近郊の陶工だけが用いた手法で、フィレンツェの陶工がルネッサンス期に、メディチ家の援助のもとにヨーロッパ各地に移住したという事実があることから、移住先で製作した可能性があることがわかった。 次年度以降、彼ら陶工の移動した「マジョリカ街道」とも言うべきルートを北上し、マジョリカを日本に搬入したオランダ連合東インド会社との接点を探る。
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