2004 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代鎖国前後の日本と海外諸国との交易についての考古学的研究
Project/Area Number |
15520488
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
松本 啓子 財団法人大阪市文化財協会, 調査研究部, 主任学芸員 (20344377)
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Keywords | 近世史 / 考古学 / マジョリカ陶器 / 鎖国 / オランダ連合東インド会社 / 国際情報交換 / イタリア:フランス:ベルギー:オランダ / foglie文アルバレルロ形壺 |
Research Abstract |
17世紀の鎖国期の日本にオランダ連合東インド会社経由で輸入されたマジョリカ陶器の産地を探るため、イタリア・フランスに大坂城跡出土のfoglie文アルバレルロ形壷を持参して、実物どうし比較検討し、研究者と意見交換を行なった。昨年、日本に残るマジョリカ陶器に特徴的なfoglie文の原形がヴェネツィア発祥で、フィレンツェからルネッサンス期にヨーロッパ各地へ広まったことがわかったが、今回はイタリアのトスカーナとリグーリア、フランスのリヨン、トロワにおいて当地のマジョリカのfoglie文を検討し、アルバレルロの使用方法、流通状況などの情報を収集した。 結果、フランスでマジョリカの一大産地であるリヨンでは、foglie文のマジョリカは、イタリアのトスカーナ地方とリグーリア地方から移住した陶工たちの製作、またはその影響下で作られたものであることがわかった。また、陶工移住に関する文献も一部残っているとの情報を得た。 そして、中・北部イタリアではあまり見られなかった大坂城跡出土品に似た色調や焼成のマジョリカが、リヨンでは多数出土していることがわかった。しかし、リヨン産で縦方向のfoglie文のものはカタログ掲載の2例しか確認できず、またアルバレルロの形態も同じものがほとんどないなど、大坂城跡出土品の産地がリヨンとは断定できなかった。大坂城跡出土品の胎土の成分比はフィレンツェの製品に似るが、フランスでは胎土の分析例がないため、今後の課題となった。また、トロワとトスカーナの修道院では現在に続くアルバレルロの使用例を実見した。アルバレルロはおもに修道院付設の病院・薬局で使われるもので、市場での流通はあまりなく、専属の窯がある病院さえあった。ヨーロッパではリヨンとアントワープがルネッサンス期のアルバレルロの二大供給地で、次年度は両産地の製品を比較して違いを確認し、大坂城出土品の産地の手がかりを得たい。
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