2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15520489
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
岡林 孝作 奈良県立橿原考古学研究所, 調査研究部, 主任研究員 (80250380)
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Keywords | 古墳時代 / 木棺 / 樹種同定 / コウヤマキ |
Research Abstract |
本年度は、木棺用材の分析資料の収集と、文献収集を主に行い、あわせて棺の用材に関連する予察的研究を論文2編にまとめて発表した。 木棺用材の分析資料の収集は、(1)出土した木棺材の試料採取および樹種同定、(2)木棺材に利用された樹木の現生樹の観察の2方面から行った。(1)では兵庫県綾部山39号墳、奈良県鴨都波1号墳、大阪府長原古墳群等で出土した材の切片を採取し、プレパラートを作成して観察した。長原古墳群で出土した一連の木棺材のうち、古墳時代前期の特異な形態をとる短小な刳抜式木棺は広葉樹を使用していることが判明し、木棺形態の定型化と用材選択との間に関連性があるとの見通しを補強する材料となった。現在福岡県における出土木棺材の試料採取について依頼中であり、16年度も引き続き試料の収集を継続する。現生樹の観察は、実際に樹幹からどの程度の大きさの木棺を製作できるか、一定規模の木棺を製作するためにどの程度の樹高、樹齢の木が必要か、といった観点から行った。16年度も引き続き資料の収集を行う。なお、綾部山39号墳の棺材同定結果については、考察を付して同古墳の発掘調査報告書に掲載の予定である。 発表論文のうち「前・中期古墳における納棺と棺の運搬」は木材と石材という棺材の選択に着目し、古墳時代の棺においては原材料の堅牢性、永続性が重視された可能性を検討した。木棺においてコウヤマキが選択的に使用された思想的、宗教的な背景をさらに深く追究する必要性を痛感する。このことと関連し、コウヤマキ選択の確立時期についても考察を広げる必要がある。「中国における木棺と棺形舎利容器」は漢代から唐代までの中国に目を転じ、江南産木材の選択的使用、材の加工や木棺の製作方法等について考えてみた。古代中国における江南産木材の使用は一種のブランド志向であり、古墳時代のわが国におけるあり方とは様子が異なるようである。ただし、実物資料の豊富な中国では製作技術面での検討が進んでおり、材の選択と加工の問題を考察する上で参考とすべきである。礼典等に見られる死生観と棺に対する思惟の問題も、上に述べた思想的、宗教的な背景との関係において重要な示唆を与えるものである。
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Research Products
(2 results)