2003 Fiscal Year Annual Research Report
第二次世界大戦以前のカナダ西岸における日系漁民の拡散構造に関する歴史地理学的研究
Project/Area Number |
15520508
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河原 典史 立命館大学, 文学部, 助教授 (60278489)
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Keywords | カナダ / 移民 / 漁業 / 塩ニシン / ナナイモ / 拡散構造 |
Research Abstract |
本年度では、バンクーバー島東岸のナナイモにおける日本人によるニシン漁業について、実証的な研究を行なった。 研究方法については、『加奈陀同胞発展史一・二・三』に記されたにニシン漁業史を整理し、『在加奈陀邦人人名録』『加奈陀在留邦人名簿』などの資料から、ナナイモにおける日本人の出身地を把握した。邦文資料からだけでは判明しない職業と居住地については、"BC Directory"や"Fire Insurance Map"、漁船については"List of Vessels on the Registry Books of the Dominion of Canada"、塩ニシンの輸出に関しては"Fishery Statistics of Canada"などの英文資料を利用した。さらに、ニシン漁業関係者からの聞き取り調査や、ナナイモとその沖合にあるニューキャッスル島での現地踏査を実施した。 戦前のBC州における日本人によるニシン漁業は、1902年頃に始められた。12月から翌年の2月の漁期になると、バンクーバーやスティーブストンからナナイモへ季節的な移動が行なわれた。ナナイモ市街地の北部に塩ニシン製造所が設けられ、その周辺に関係者の簡易住居が建てられた。1916年頃、炭鉱の統廃合と関わって、製造所はニューキャッスル島北西部に移動した。 塩ニシン製造業者のひとりである大阪府貝塚町(当時)出身の嘉祥治三郎(1877年生)は、渡加以前には泉州・紀州を活動域とする鮮魚運搬業を営んでいた。義弟の和歌山県三尾出身者を介して渡加した彼も、三尾出身者を多く雇用していた。さらに日本人だけでなく、廃坑によって失職したイタリア系も雇用されていた。 太平洋戦争の勃発によって、日本人はBC州からの強制移動が科せられ、ニシン漁業と日本・朝鮮・中国などへの塩ニシンの輸出も終焉を迎えた。しかし現在でも、ニューキャッスル島には当時を偲ばせる遺構が残っている。
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