2003 Fiscal Year Annual Research Report
子育てコミュニティとしての地蔵盆の現代民俗学的研究
Project/Area Number |
15520516
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Research Institution | Osaka University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
森栗 茂一 大阪外国語大学, 外国語学部, 教授 (20188452)
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Keywords | 地蔵盆 / 神戸 / 子育てサポーター / 災害 / 伝承 |
Research Abstract |
子育てと地蔵盆に関して予備調査を行った。これらは、個別の調査であり、両者を連関させる研究にはまだいたっていないが、それは今後の課題である。(1)山口県萩市、山口県山口市の子育ての民俗慣行、青年宿等と信仰行事との関連に関する調査(2)福岡県北九州市八幡西区木屋瀬の子育て慣行調査と祭礼行事 結果:子育ては、それだけを取り出すのではなく、地域での人の一生を通じた総合福祉から見て行くべきであることをこの調査で知った。妊婦への地域的配慮慣行、地域での相互の子育て慣行、青年どうしの相互育成慣行と祭礼行事等を通じた地域への参画、そして、高齢者を地域で見守る慣行、死者を追悼する慣行が、連続していることを感じた。また、子育てだけではなく、一方で、防災も重要な地域活動の課題であり、民俗・祭礼や伝承に残っている。子育ては、縦軸としての人の一生の地域ささえあいシステムのなかにあるだけでなく、横軸としては、防災から地域福祉まで、さらには地域経済までの、地域での「命いかし」のなかで、座標を得ている。そういう総合的な視点から、地蔵信仰をとらえなおしたいと感じた。一方で、これが、(3)神戸市東灘区・神戸市長田区・明石市の地蔵信仰ではどのように展開しているのかを調査検討してみた。これら兵庫県都市部の地蔵信仰の場合・阪神大震災や神戸大空襲、神戸大水害、さらには公害と関わって、「この地蔵さんがあったから震災でも助かった」「この地蔵は水害で流されて空襲で焼けて…」「昔は不衛生で子どもが死んで…」という形での信仰伝承がある。・近代都市の厳しい子育て環境のなかで、地蔵が慰霊、救済、連帯の要となっていた。その行事の中心が地蔵盆である。ただ、それらの地蔵盆が、どの程度地域の人々に開かれていたかどうかは、別の次元の問題であり、今後の検討課題である。
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