2003 Fiscal Year Annual Research Report
新華僑の社会構造とエスニック・アイデンティティに関する研究-神戸市を事例として
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15520520
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
高橋 晋一 徳島大学, 総合科学部, 助教授 (10236284)
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Keywords | 華僑 / ネットワーク / 文化変容 / 神戸 |
Research Abstract |
神戸には、19世紀後半より移り住んだ老華僑たちの社会組織が存在し、さまざまな活動を行っている。神戸華僑全体の統合組織として神戸華僑総会があり、さらには中国での出身地に応じた地縁組織(福建同郷会など)、同業の職業団体、教育組織(中華同文学校など)など多くの組織が重層化して、老華僑社会を構成している。老華僑社会がこのような安定した社会組織を基盤としてなりたっているのに対し、1970年代以降に来日した「新華僑」の多くは、(神戸という土地に住んでいるにもかかわらず)こうした既存の老華僑社会=組織への所属を選択せず、むしろ個人のネットワーク(同郷ネットワークが発動する場合が多い)を軸として、さまざまな情報交換や相互扶助を行ってきた。こうしたネットワークを拡大した形で結成されたのが、2003年に設立された日本新華僑華人会(さらにはその下部組織の西日本新華僑華人聯合会など)であり、これは新華僑の「組織化」の動きととらえることができる。このように(広域レベルで)新華僑の組織化・連携が進む一方で、近年は新華僑の定住化傾向が進み、次第に「地域」の老華僑社会に溶け込んでいこうという動きも見え始めた。新華僑の華僑総会への登録、華僑社会の伝統行事への参加、華僑学校への入学などの現象にそうした傾向がよく現れている。今後は、新華僑のネットワークと組織化、新華僑と地元老華僑の関係という二つの側面から、新華僑の社会のダイナミズムをとらえる必要がある。
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