2004 Fiscal Year Annual Research Report
西日本海域社会における漁民の移動と定住に関する研究
Project/Area Number |
15520530
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Research Institution | Tokyo Metropolitan College |
Principal Investigator |
高桑 史子 東京都立短期大学, 文化国際学科, 教授 (90289984)
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Keywords | 漁民 / 西日本海域社会 / 移動漁民 / 油津 / 定置網出稼ぎ / 甑島 / 日南・青島地域の地域おこし / 愛媛県・高知県の漁民 |
Research Abstract |
本年度は当該研究の2年目にあたるため、具体的な地域を設定して、実態調査と文献研究を中心に研究を実施するとともに、資料収集を行った。昨年度に実施した愛媛県宇和島市と西海町の調査、高知県高知市における資料収集では四国南西海域に注目したので、本年度は九州南東域に注目し、漁業をめぐる九州と四国漁民との係わりに焦点を当てて研究を実施した。 実態調査は宮崎県油津を中心とする地域の定置網漁業と漁民の動きについて、平成16年8月20日から27日まで宮崎市と油津に滞在して実施した。かつて油津一帯に定置網漁が盛んであった当時、薩摩半島沖合にある甑島から多くの漁民が季節で稼ぎに出ていた。すでに油津に定置網漁が衰退して30年以上になるにもかかわらず、現在でも油津の旧商店街や港では甑島の人々が冬季に出稼ぎに来ていた話をきくことができた。また、油津が漁業のみならず、城下町飫肥や近隣の産物を上方に運ぶ役割を果たしており、このことがまた油津の漁業を推進させる原動力になっていたことが明らかになった。つまり、海運業と漁業がこの地域と瀬戸内地方・上方とを結びつける役割を果たしていたことになる。現在では油津の漁業は衰退しているが、新たな地域おこしの方向性を模索している。宮崎県の日南・青島地方の観光産業の衰退という現実に対し、四国の愛媛や高知県に比べて宮崎県では取り組みが消極的である。この点を漁業や漁民をめぐる動きからさらに考察を加えるべきである。 漁民の移動については、広域を移動する漁民と一定の地域的枠の中で移動をするような小規模な移動漁民とがある。ひとつはカツオ漁民のような広域を移動する漁民は南西諸島からさらに南下したり、また海洋資源を求めて豪州や北米にも足跡を残している漁民がいる一方で、鹿児島県と宮崎県、あるいは愛媛県内など小規模な移動を繰り返す中から出村をつくるタイプもある。後者のような移動の歴史から地域史の再考も可能である。これら大規模な移動と小規模な移動を詳細にみていくことで西日本海域社会という領域での人々の動きを把握するという本研究の目的に近づくことができる。
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