2006 Fiscal Year Annual Research Report
日本歴史における水田環境の存在意義に関する民俗学的研究
Project/Area Number |
15520531
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
安室 知 国立歴史民俗博物館, 研究部, 助教授 (60220159)
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Keywords | 民俗学 / 生業 / 民俗技術 / 水田環境 / 鳥猟 |
Research Abstract |
本年度も平成17年度に引き続き、伝統的な狩猟技術(とくにガン・カモ科鳥類を対象とする狩猟法)について、日本列島の水田稲作地帯を広範囲に調査して回った。またそれとともに、とくに石川県加賀市大聖寺(片野鴨池)に調査地を絞って、水田生態系が大きく変貌する以前の昭和初期に時間軸を設定し、当時の生業とくに水田稲作について聞き取り調査により復元するとともに、そこに伝承されるサカアミ(1辺2メートルほどの三角網)を用いた伝統カモ猟について写真撮影および録音により記録した。また同時に、市役所や大聖寺捕鴨組合に残される近代の古文献資料と統計資料の分類整理をおこなった。 その結果、現在まったく経済性を持たず趣味的におこなわれるにすぎないサカアミ猟が、今もって日本列島内の5箇所に伝えられ実施されている背景として、伝統カモ猟の伝承地の多くが「とくに水鳥のための生息地として国際的に重要な湿地に関する条約」(ラムサール条約)の指定地になっている点に注目すべきであることが分かった。 とくに1990年代以降において文化資源として積極的に再評価されるようになる民俗技術が、ラムサール条約により提起されたワイズ・ユースの考え方と合致することで、伝統カモ猟法に環境保全的なイメージが与えられるようになったこと、またそれを文化的に貴重な伝承であり資源として住民(狩猟者も含め)自らが認めるようになってきたことは、伝統カモ猟法と水田環境との関係を考えるとき現代的問題として注目される。
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Research Products
(1 results)