Research Abstract |
今年度は,都市部における定年後のサラリーマンの聞き取り調査を集中的に行った。現在,2007年から始まる団塊の世代の定年問題が社会的関心を集めているが,いわばその団塊の「兄」世代(1930年代生まれ)で,大学卒業後,鉄鋼,造船,自動車,電機,石油化学などいわゆる「重厚長大」産業に従事した男性を主な対象とした(具体的には石川島播磨重工業(IHI),日産自動車,昭和電工,東燃化学,日立製作所など)。高度成長期(1955〜73年)においてこれらの産業は,技術革新による発展,内需拡大型の成長から輸出主導型の成長への転換をはかったことが共通しており,調査対象者はそれぞれの企業の躍進の中で好況不況の「波」を体験してきた。また,彼らは東京近郊にマイホームを購入し,核家族の形態の生活を営んできた。60〜65歳の頃に定年退職し,現在70歳代である。彼らの定年後の活動には,JICAのシニアボランティアへの参加,専門知識と経験を生かした顧問的な仕事,囲碁やゴルフ,テニスなどの趣味,マンション管理組合の活動,田舎暮らしの実践など,多様なものがあることがあらためて確認された。定年後のつき合いについては,大学時代の同期生の集りや大学時代に所属したクラブの集りなどが定期的に行われているケースが少なくない。ここでは,彼らの長年つとめた会社への帰属意識に代わるものとして出身大学への帰属意識を求める傾向性がうかがえる。以上,近畿地方と関東地方の農村部の事例に加えて,東京近郊の都市部のサラリーマンを対象とする高齢世代の調査を進めることができた。
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