2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
海老原 明夫 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (00114405)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺尾 美子 東京大学, 大学院・法学政治学研究科, 教授 (20114431)
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Keywords | 連邦憲法裁判所 / 収用 / 連結条項 / 補償 / 所有権 |
Research Abstract |
ドイツの憲法上の所有権保障理論は、連邦憲法裁判所の1981年の「砂利採取決定」によって根本的な転換を遂げた。その結果、これまで基本法第14条第3項の収用の領域に属すると考えられてきた問題が、基本法第14条第1項第2文の所有権の「内容規定」の問題として捉えられるようになった。そしてその「内容規定」が、所有権者の法的地位に根本的な侵害を加えたとしても、それは「収用」の問題ではなくてあくまで「内容規定」の問題とされることになり、被侵害者に課せられた負担を軽減するために、場合によって「内容規定」の枠内で補償ないし金銭的調整が与えられることになった。それが、「補償義務を伴う(entschadigungspflichtige)」あるいは「調整義務を伴う(ausgleichspflichtige)」内容規定と呼ばれる制度である。この制度は、連邦憲法裁判所の判例に牽引されつつ顕著な犀開を遂げ、現在、所有権保障理論の中でも最も注目すべき論点となっている。とくに問題となるのは、補償ないし調整義務が生ずる場合と、補償なしに甘受さるべき社会的拘束との区別の基準である。学説・判例の多くは、従来の収用規範と内容規定との区別基準が基本的には、補償義務を伴う内容規定と補償義務を伴わない内容規定との区別に準用される、と見るようである。ただし、内容規定が収用的効果をもつのは、予測しがたい個別的事例、すなわちいわゆる「偶然的収用」であることが多く、連結条項の下での、立法者の予測した類型的・定型的収用とは自ずとその要件を異にすることが多い。こうした前提の下で、補償要否の基準を詰め直すことが、現在の判例・学説の課題となっている。
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