2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530010
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉田 勇 熊本大学, 法学部, 教授 (50037074)
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Keywords | 入会権の調整 / 草原の多面的活用 / 阿蘇地域 / 法社会学 |
Research Abstract |
1 阿蘇郡南小国町の黒川部落を舞台に裁判で争われた二つの入会権紛争は、牧野組合員による草原の直接的利用と地盤所有者・部落住民の求める貨幣経済的な配分利益との調整に関わるものであったが、広くは入会慣行の変容過程で生じた入会権者の範囲と入会権の権利と義務(負担)の内容をめぐる紛争として現代の入会慣行に普遍的にみられる性格のものであることがわかった(この入会権紛争当事者へのヒアリングは次年度に計画している)。 2 畜産農家の減少、草原の畜産的利用の衰退により、入会地の維持・管理が負担になりつつある牧野組合が増加している半面、地元のNPO(阿蘇グリーン・ストック)の活動による都市民の野焼きボランティアへの参加の拡大と草原の畜産的利用の活性化のための連携協力とがみられた。 3 阿蘇地域の175の牧野組合に対する調査票の集計はまだ終わっていないが、この調査結果を従来のそれと比較することにより、阿蘇の入会地(とくに草原)の利用・管理状況がどのように変容しているかを明らかにすることができるはずである。 4 草原の景観価値や水源涵養的・環境保全的機能が評価されるとともに、草原維持コストの都市による一部分担の仕組みも考え始められている。入会集団によっては、都市民がルールを守るならば入会地を開放してもよいという意識も生まれつつあり、都市民がコモンズとしての入会地=草原に、一定の負担を前提にアクセス権をもつという考え方も出てきている。 5 町村合併の動きに呼応して町村有入会地の扱いをどうするかが検討されていることもわかった。
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