2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530010
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
吉田 勇 熊本大学, 法学部, 教授 (50037074)
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Keywords | 入会権紛争 / 入会権の調整 / 阿蘇地域 / 草原の維持管理 / 法社会学 |
Research Abstract |
1 南小国町黒川部落における訴訟において、牧野組合以外の部落住民のなかでも、その後入会地を利用していないが、黒川部落に居住している非畜産農家や、入村金を払って黒川部落に移住し旅館業を営むようになった非農家なども、入会権者であると認められたために、訴訟後には、入会権者の義務として野焼き等に参加していることがわかった。現在の黒川牧野管理組合の入会権者は45戸、そのうち農家は15戸、畜産農家は2戸、牛の飼育頭数はわずかに6頭である。 2 平成15年度の牧野組合意向調査の結果と平成10年度の阿蘇グリーンストックによる調査結果の比較により、この5年間で、阿蘇地域の牧草地は8%、入会権者は5%、有畜農家は実に36%、放牧頭数も17%減少していることがわかった。牧野組合ないし入会集団だけでの草原の維持管理が困難になりつつあるため、阿蘇グリーンストックが組織している都市住民の野焼き支援ボランティアを受け入れる牧野組合が増加しつつある。草原維持のために草資源の流通の事業化をめざすNPOも立ち上がっている。利害調整を外部から支援する動きが注目される。 3 平成の町村合併の過程では、町村有入会地をめぐる政策的な利害調整がなされているが、阿蘇町、一宮町、波野村の合併による阿蘇市の誕生過程では、入会権調整の仕方は町村によって異なることがわかった。他方、小国町と合併しなかった南小国町へのヒアリング調査によれば、両町のそれまでの入会政策の違いや入会権調整の仕方の対立が合併を阻んだ要因ではないこともわかった。 4 環境社会学・人類学・経済学の分野で展開されている「コモンズ」論は、共用資源のひとつである入会草原の新しい理論的基礎づけに有効であることがわかった。地域社会における自然資源の「共同」利用・管理は、都市地域における共同管理のあり方にも示唆を与えるものであり、この研究により、地域社会における「共同性」のあり方を再検討する見通しが立った。
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