2005 Fiscal Year Annual Research Report
共同利益の法主体化及び公的事務の民間化に対応した行政法理論構築のための比較法研究
Project/Area Number |
15530016
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
亘理 格 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (30125695)
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Keywords | 公益概念 / 共同利益 / 民間化 / 開発事業 / 景観利益 / 公的サービス利用者 / 相対効的紛争解決 |
Research Abstract |
まず、本研究課題の背景にある公益概念との関係では、フランスの土地法専門雑誌に、開発事業の実体的適法性に関する近年のわが国の判例傾向を分析した研究成果を公表し、開発事業の公益性に関する適法性審査のあり方に関する日仏比較法研究の意義を明らかにした。 次に、本研究の第1の柱である<共同利益の担い手の法主体化>との関係では、優れた地域景観の形成・維持のため永年にわたって自己の土地利用権の行使を自己規制してきた住民が当該地域景観に対して有する景観利益を、一般公益及び個別的利益双方から区別された共同利益として把握しようとする視点から、景観利益の保護法益性の成立可能性を解明し、また、地域景観保護のための公法的計画制度の拡充と普及が、共同利益としての景観利益の保護法益性を定着させる前提条件でもあることを明らかにした。 さらに、本研究の第2の柱である<公的事務の民間化>との関係では、特に公立保育所の廃止・民営化問題を公的サービス利用者の権利確保という視点から掘り下げ、児童の保育期間中における廃止・民営化の制約を解明するとともに、関係者間の利害対立の適正な調整に基づいた相対効的紛争解決の可能性について明らかにした。 以上の研究成果を踏まえて、今日の行政法理論は、私的権利利益と公益との対立構図に立脚した従来の理論枠組みによっては、現代行政と市民社会との複層化した利益関係を適切に処理し得なくなってきていることが明かとなった。
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Research Products
(4 results)