Research Abstract |
学際的構築として、昨年度基礎研究を行った「民事訴訟と行政訴訟の共通性の探究」を,平成17年6月に改正行政事件訴訟法が成立したことに鑑み,その今後の実務的運用のあり方の探究というレベルに展開させた。 (1)改正行政訴訟法における当事者訴訟について。 当事者訴訟のうち,給付と確認の訴えの具体例について,これまでの判例分析と,アメリカ行政訴訟との比較を通じて,どのように活用できるかを探究した。 (2)改正行政訴訟法のもたらす理論的課題について 当事者訴訟の検討を通じて,抗告訴訟と当事者訴訟の峻別の揺らぎ,さらには,行政訴訟(抗告訴訟)と民事訴訟の峻別の揺らぎについての考察を進めた。その結果は,これまでの行政訴訟像を大幅に変更するインパクトを持ちうることの指摘となった。 (3)改正行政訴訟における原告適格論 こうした抗告訴訟と当事者訴訟の峻別への懐疑の一方で,原告適格論については,行政訴訟の独自性を主張すべきことについても,指摘をした。すなわちこれは,個別法の解釈問題であり,訴訟の形態が,民事訴訟であるか行政訴訟(抗告訴訟)であるかには,関わらない問題であるところ,これまでは,そのところの取り違えがあったまま,行政法教育がなされてきたことを指摘した。 (4)法科大学院における実践 以上のような研究成果に立ち,神戸大学法科大学院における行政法の授業でも,民事訴訟における原告適格論と行政訴訟における原告適格論の移相の違い(つまり,本来,同じことを論じているわけではない,別の議論であるということ),請求の趣旨の考え方の違い,等々について,両者を同時に視野にいれて教育することを試行的に行った。 (5)また,民事訴訟と行政処分(行政訴訟ではない)の交錯というテーマも取り扱い,その具体例として,知的財産侵害物品の関税における取締りと,侵害訴訟との関係を取り上げた。
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