Research Abstract |
昨年度の成果を踏まえ,民事訴訟と行政訴訟の共通性の探求について,一応のまとめを行った。当事者訴訟を民事訴訟との共通性を強調するとともに,抗告訴訟を,従来の学説とは異なりその「不服の訴え」である点を強調して理論構成をするアプローチをとった。このことにより,これまでもっとも異質と思われていたアメリカ行政訴訟との間に,逆に,大きな共通性を見出すことに成功したと考えている。また,民事事件における訴訟構造と,行政事件における訴訟構造の基本的な共通性を見出すことにもなった。 また,行政実務における紛争の発生の仕方から見た,行政実務と裁判実務の連動について改めて視線をあてて,筆者の行政指導に関する研究の展開を試みた。ここでは,民事的紛争がいかに行政的紛争として転化しているかに意を用いた分析を行った。 以上の研究成果を公表したことを踏まえて,それを教育用に転化し,法科大学院にふさわしい行政法教育の新しいあり方を探るため,民事事件・民事訴訟との共通性,そして裁判実務への有用性を意識した教材開発を試み,事例とそれについての質問,そして分析方法を学生に学ばせるための原稿を,適宜,法曹実務家との打ち合わせを行いつつ作成した。 2005年度の授業において,この教材を試行的に用い,その経験を踏まえて,改訂版を作成したところである。行政法の授業であるが,全体として,民事事件における民事訴訟の構造を強く意識し,かつ実務における行政紛争の置き方を具体的に把握することに力点をおいたものとなっている。
|