2004 Fiscal Year Annual Research Report
新しい時代における公務員の勤務評定に関する法政策的研究
Project/Area Number |
15530023
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
下井 康史 新潟大学, 大学院・実務法学研究科, 助教授 (80261262)
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Keywords | 公務員 / フランス / 勤務評定 / 行政手続 / 情報公開 / 個人情報保護 / 行政事件訴訟 / 本人開示 |
Research Abstract |
平成16年度は、フランスにおける公務員勤務評定制度をめぐる理論状況の把握とともに、日本における法的問題点の分析を行った。着眼点は、(1)評定基準の事前策定・公表制度、(2)本人開示制度、(3)勤務評定に対する裁判統制である。いずれについても、一般的行政法理論との関連づけを重視した。(1)は行政手続や情報公開制度の一貫に位置づけられ、この点は日仏ともに議論は十分ではないものの、司法審査のあり方に重要な影響を与えるため、今後さらなる検討を予定している。(2)は個人情報保護法制における本人開示制度に関わる。フランスでは、人事記録閲覧請求権を各公務員に承認する法律が20世紀初頭に制定されており、現行官吏法は、勤務評定の透明性を高めるシステムの整備が、同制度の公正な運用を担保するとの認識の下、評定結果の本人通知制度を設ける。わが国の地方公共団体について、200を超える団体の制度を調査したところ、何らかの形で本人開示を承認するものは33団体に過ぎなかった。我が国では、本人開示のしくみにより評定が形式的なものになることへの懸念が行政の現場から表明されており、実は、フランスにおいても同様の状況が見られる。今後は、この点を工夫するためのしくみの検討が必須である。(3)は、行政訴訟制度に関わる。勤務評定の公正さを担保するためには、なんらかのかたちで司法審査が可能なしくみが用意されるべきであるところ、フランスでは1962年の最高裁判決以来、勤務評定結果の取消を求める取消訴訟が認められている。我が国においては、この点が十分ではない。平成16年の行政事件訴訟法改正により、実質的当事者訴訟としての確認訴訟が明記されたところ、実定公務員法制で何らかの苦情申立・異議申立制度を整備し、係る制度と行政事件訴訟法のしくみがリンクされるべきであろう。
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Research Products
(14 results)