2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530040
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川濱 昇 京都大学, 大学院・法学研究科, 教授 (60204749)
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Keywords | 優越的地位の濫用 / 購買力の濫用 / 買い手独占 / 市場支配的地位の濫用 / 市場支配力 / 妨害的濫用 / 搾取的濫用 |
Research Abstract |
本年度は昨年度に引き続き比較法的観点から優越的地位の濫用規制を検討した。前年度では、優越的地位の濫用規制に対比されるべき欧米の規制として市場支配力濫用規制を、特に搾取的濫用を中心に検討したが、本年度は市場支配的地位の濫用の中でも優越的地位の濫用と対比され難いと考えられてきた妨害的濫用を中心に検討した。まず、市場支配的地位の濫用規制の前提としての市場支配力概念を合併規制を参照軸に解明を進め、さらに優越的地位の典型としての金融機関の支配力にかかる問題の検討を行った。ついで、濫用行為としてこれまで必ずしも優越的地位の濫用に対応するものと考えられてこなかった妨害濫用の典型であるエッセンシャルファシリティ理論の適用に搾取的濫用の視点が不可欠であることを明らかにした。また、妨害的濫用規制中にわが国の優越的地位の濫用規制の典型的事例に相当するものが存在することを明らかにした。すなわち、最近わが国で多発している大規模小売店の納入業者に対する優越的地位の濫用の事件では、これまでの規制例と同様、契約と異なった条件の押しつけ、契約上の対価ではない金銭的要求、不当なリスク移転などが問題となっているが、これらはわが国流通業界の特殊事情と考えられてきた。しかし、英国の流通業界でもまったく同様の問題が生じており、それらが独占規制としてしかも妨害的濫用の系譜として規制されていることを明らかにした。さらにそこで問題となっている市場支配力が単なるロックインによる限定された市場によるものではなく、買手市場の特殊性に注目するもののコンベンショナルな市場に基づいて認定されていることを明らかにした。そこでの分析に依拠して、わが国の大規模小売業者の優越的地位が、関係特有の投資に帰因する転換不可能性以外の観点から説明可能であることを示した。
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Research Products
(3 results)