2003 Fiscal Year Annual Research Report
市場支配的事業者の意義およびその濫用行為に対する法規制の比較法的研究
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15530041
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
泉水 文雄 神戸大学, 大学院・法学研究科, 教授 (50179363)
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Keywords | 支配的地位 / エッセンシャルファシリティ / 企業結合 / 公正取引委員会 / 電気通信 / 競争評価 / 市場支配力 / 問題解消措置 |
Research Abstract |
本年度の研究実績は次の通り。 第一に、欧州における支配的地位の濫用規制において重要な役割を果たすエッセンシャルファシリティ理論について、研究発表欄記載の「欧州におけるエッセンシャルファシリティ理論とその運用」を公表した。本論文は、表題について、欧州の決定・判決を分析し、欧州の規制の全体像とその特徴を明らかにし、さらに米国の判例等との比権研究にも及び、欧州の規制の特徴と共通性を明らかにした。また、公取委が本年度行った独占寡占規制見直しの中で、これらを参考にした新立法を提案している。その検討の際の研究会(部会)に参加するとともに、2003年2月24日に行われた自民党独禁法調査会における有識者からの意見聴取の際に意見を述べた。 第二に、研究発表欄記載の「企業結合規制における救済措置の設計と手続のあり方」においては、企業結合による支配的地位、市場支配力の形成・強化を規制し、これらの要件を満たす企業結合計画を変更することで問題を解消する問題解消措置(レメディ)について、米国、欧州の判審決および実務を比較分析し、さらに日本におけるこの問題にかかる過去10年間の主要事例を網羅的に分析し、買い手の選択、措置の完了期間、不十分と考えられる行動的措置の多用などの問題点を指摘した。 第三に、本研究に関係して、電気通信事業に関して総務省が行っている「競争評価」について、京都大学大学院経済学研究科・総務省共催の「電気通信分野の競争評価についての京都カンファレンス:市場画定のための定量的な分析モデルの討議会」においてコメンテーターとしてコメントと討論を行った。さらに、公正取引委員会の競争政策研究センター主任客員研究員として「公益分野における市場支配的地位の濫用に対するEC競争法の適用に関する調査」を行い、同センター報告書(2004年3月)の第1章において、EC条約82条(支配的地位の濫用規制)の意義、特徴、日米との相違点、共通点、相違点の経済学からの説明について検討した。 第四に、前回の研究の成果でもあるが、市場支配力が別の場面で現れるときの問題について、セーフガード、高速条件付取引(プレイステーション事件)、片面的拘束のある入札談合について研究成果を公表した。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 泉水文雄: "企業結合規制における救済措置の設計と手続のあり方"日本経済法学会年報. 46号. 75-105 (2003)
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[Publications] 泉水文雄: "経済法学から見たセーフガード"日本国際経済法学会年報. 12号. 46-71 (2003)
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[Publications] 泉水文雄: "欧州におけるエッセンシャルファシリティ理論とその運用"公正取引. 637号. 32-38 (2003)
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[Publications] 泉水文雄: "プレイステーション事件"別冊NBL. 79号. 120-121 (2003)
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[Publications] 泉水文雄: "市場分割を背景とした入札談合"ジュリスト. 1246号. 239-240 (2003)