2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530049
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土井 政和 九州大学, 大学院・法学研究院, 教授 (30188841)
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Keywords | 社会内刑罰 / 更生保護施設 / 処遇施設化 / 保護観察の二極化 / 中間的不利益処分 / 定期出頭命令 / 電子監視 |
Research Abstract |
本年の研究計画のひとつは、代表的な更生保護施設を訪問し、処遇施設化の実態を調査することであった。結果的には、京都にある盟親および白光荘の二施設を訪問できた。前者は、定員40名の男子施設である。処遇としては、自助の精神に基づき、責任の自覚を促す観点から、SSTを行っている。職場で飲み会に誘われた場合の対応、金銭を無心された時の対応などの指導を行っている。多くの寮生が自主的に参加し、効果も上がっていると自己評価している。他方、処遇に参加しようとしない寮生には、施設の担当職員が面接を繰り返す。場合によっては、保護観察所に呼び出してもらい、観察官による面接を依頼している。保護観察官は月1日常駐している。後者は、女性施設で現在5名の寮生を収容する。処遇としては、自立に向けての援助を行っているが、寮生が女性で少ないこともあって、彼女らとの関係は縦関係ではなく横関係である。寮生には、集団生活であることを自覚させ、指導に乗ってこない寮生には繰り返し説得を行う。SSTとしては、パソコンを学ばせ、家族へ手紙を書かせる指導をしているが、本人のみならず家族にも好評とのことである。これらの施設参観によって得られた情報によれば、更生保護施設においては、処遇施設化は緒についたばかりであり、各施設ともその実施方法を模索している状態であることがうかがえる。他方、盟親に見られるように、保護観察所との関係は緊密化している。次年度にも、引き続き施設参観を継続し、処遇施設化の方向が自助への援助かそれとも社会防衛へ向かうのかの検証を行っていきたい。 もう一つの研究計画である、文献による社会内刑罰をめぐる動向分析については、日本およびドイツの状況を調査した。日本の分析から、保護観察の二極化政策と中間的不利益処分の提案が析出された。前者は、保護観察対象者を問題のある特定の対象者とそうでない者に分け、前者には取り消しによる施設収容、後者には保護観察の解除等と異なる措置を科そうとするものである。しかし、実務的には、このような二者択一的な処遇選択に躊躇があり、その間に中間的不利益処分の必要性が認識されている。その方法として、定期出頭命令、特定の処遇プログラムへの参加の義務付け、強制的処遇委託などとともに、他方で、電子監視、夜間外出禁止命令、尿検査などがあげられている。しかし、特に後者は、再犯防止目的による監督強化であり、保護観察のケースワーク機能とは性格を異にする、との批判もある。これは、いわば保護観察が社会内刑罰化することへの警戒だといえよう。同様の批判はドイツでも見られる。こうして、文献調査により、本研究の視座は得られたと思われる。
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