2003 Fiscal Year Annual Research Report
強姦罪・強制わいせつ罪の研究-ジェンダーの視点から
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15530050
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
木村 光江 東京都立大学, 法学部, 教授 (50169942)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀井 源太郎 東京都立大学, 法学部, 助教授 (90305409)
前田 雅英 東京都立大学, 法学部, 教授 (60009842)
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Keywords | 性犯罪 / 強姦罪 / 強制わいせつ罪 / 性的自己決定権 / 性的自由に対する罪 / 量刑 / ジェンダー / 被害者の同意 |
Research Abstract |
1.強姦罪、強制わいせつ罪について、主として統計データから発生状況を調査し、検討を加えた。その結果、強姦罪、強制わいせつ罪ともに、特に平成に入って以来、認知件数の増加が見られた。性犯罪については暗数が多いと考えられることから、慎重な検討が必要であるが、特に強制わいせつ罪の認知件数の増加は顕著である。 2.また、強姦罪・強制わいせつ罪に対する検察・裁判所の態度の変化について、起訴率、判決の具体的分析を通じて検討を加えた。特に平成に入ってから、交通業過を除く刑法犯の起訴率は比較的安定した状況であるが、性犯罪の起訴率は増加の一途を遂げている。とりわけ、他の刑法犯に比べ極端に起訴率の低かった強制わいせつ罪が、近時は刑法犯全体とほぼ同様の水準となった点が着目される。裁判例においても、戦後の第1審の強姦罪の量刑について、詳細な分析を行った。その結果、実刑の割合が、昭和60年当時、約5割であったものが、その後現在に至るまで増加を続け、現在では約7割を占めるに至っている。戦後ほぼ一貫して、性犯罪に関しては、次第に起訴する割合が高まり、起訴されれば、言い渡される刑は次第に重くなってきている実態が明らかになった。その背景には、刑事司法が、女性被害者への評価を変化させてきたといいうると思われる。 3.さらに、強姦罪、強制わいせつ罪を性的自由に対する罪と位置づける現行法の解釈についても、明治以来のわが国の法解釈の変遷、さらに、欧米の性犯罪との比較法的分析を加えつつ検討した。そこでは、性的自己決定権を保護法益として強調せざるを得なかった欧米諸国の実態を踏まえ、我が国では、自己決定を保護法益とすることにより、むしろ被害者が法益が十分保護されないおそれが生ずる点を示した。 4.以上の分析について、木村「強姦罪の理解の変化」法曹時報55巻9号1-18頁を中心に、論文としてまとめた。
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Research Products
(2 results)