2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530053
|
Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
守山 正 拓殖大学, 政経学部, 教授 (90191056)
|
Keywords | 犯罪統制 / 私事化 / 監視カメラ(CCTV) / ゲイティッド・コミュニティ / 防犯 / 環境犯罪学 / 社会的排除 |
Research Abstract |
犯罪統制および刑事司法の私事化傾向が世界的に拡大しつつある状況に鑑み、とくに公共空間、公道におけるCCTV(監視カメラ)の設置による防犯態勢の強化、および欧米諸国におけるゲイティッド・コミュニティ(要塞街)の拡大について、比較文化的に考察した。そこで、アメリカではこの領域を専門とする環境犯罪学のスペシャリストであるマーカス・フェルソンやロン・クラーク(いずれもラトガース大学)へのインタビューを行い、またシンシナティで開催された国際環境犯罪学セミナーに参加して、質疑応答した。また、イギリスではアントニー・ボトムズ(ケンブリッジ大学)に対するインタビューおよび同犯罪学研究所において関連資料を収集したほか、シェフィールドで開催された国際CCTV会議で日本状況を報告し、各国の専門家と意見交換を行った。 このような研究調査活動を通じ明らかになったことは、(1)犯罪情勢の悪化に伴い、市民が自衛を強化する傾向がみられること、その結果、防犯に多額の支出を余儀なくされていること、(2)CCTV(監視カメラ)の公道における設置に対しては、各国によってかなり反応が異なること、但し、イギリスではプライバシーの侵害も懸念されるCCTVの設置に対して、一般市民は概ね歓迎していること、(3)ゲイティッド・コミュニティでは地域エゴが強く、構成員同士の親睦だけが図られ、他のコミュニティとの交流に無関心か、拒絶的であること、である。これらの傾向を総合すると、いわば姿なき犯罪者、つまり潜在的犯罪者に対する排除が進み、社会の中で高額な防犯設備・空間を購入し、あるいは確保しうる中流階級以上の人々とそうではない人々との社会的分化状況がみられる。これはジョック・ヤングのいう「社会的排除(social exclusion)」が進行しつつあることを示している。 わが国においても近年犯罪問題が社会的に大きく取り上げられる状況のなかで、市民の安全を確保するための方策をめぐる議論として、どのような社会の構築をめざすかを真剣に議論する必要があり、そのためにはすでにこの種のテーマを社会的議論してきたイギリス、アメリカその他の欧米諸国に学ぶべき点が多いと思われる。つまり、今後、このような私事化の傾向がもたらすメリット、デメリットを詳細に検討する必要があるであろう。
|
Research Products
(2 results)