2004 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530053
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Research Institution | Takushoku University |
Principal Investigator |
守山 正 拓殖大学, 政経学部, 教授 (90191056)
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Keywords | 要塞街(gated community) / 犯罪予防 / 社会的排除 / 地域司法 / 私的統制 |
Research Abstract |
今年度は、私事化問題のなかでも、二つの領域に関する非公式性(informality)に焦点を当て、調査を行った。一つは、いわゆる「要塞街(gated community)」であり、もう一つは私的司法(informal justice)である。 (1)物理的な障壁で保護された「要塞街」については、犯罪予防的側面ばかりでなく、快適な住空間の追求という視点から住居学、あるいは地域運営のあり方という観点から政治学の領域でも種々の検討が行われている。これらの領域でも、快適な地域社会を創造するという意味では、もちろん犯罪予防が重要な鍵概念であることは間違い。しかし、要塞街においては、第1に、階級毎に地域住民が構成されるために、他の地域社会との隔絶が生じ、階級階差を生み出していること、第2に、いわゆる「社会的排除(social exclusion)」の問題がある。このため、アメリカの諸都市では、「要塞街」の建設を禁じる条例を有するところもみられる。したがって、犯罪予防と地域社会のあり方の問題が考察されなければならない。 (2)「私的司法」に関しては、北アイルランドの地域司法(community justice)が重要である。すなわち、北アイルランドの一部の地区では、公式の刑事司法とは別個に、警察機能・裁判機能などが地域によって果たされている。これは、北アイルランドの特殊な政治事情と関わっているが、その発生プロセスは私的統制概念を考察するうえで、きわめて意義があるように思われる。言い換えれば、公的な刑事司法機関に対する信頼が欠如すると、それに代替する私的機関が生まれる現象である。いわゆる「正統性(legitimacy)」の問題である。しかし、この地域司法には問題も少なくない。第1に、地域の構成員に対して加えられる私的制裁が過酷に成りがちなことである。げんに、北アイルランドでは非公的な(私刑としての)銃撃刑や殴打刑が行われており、悲惨な結果をもたらしている。第2に、運用が非画一的ないしは不公平になりがちなことである。これらの克服する手段として、近年、修復的司法が導入されているが、必ずしも良好な結果は生まれていない。
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Research Products
(2 results)