2004 Fiscal Year Annual Research Report
生命倫理における決定権の構造-フランス法を中心に-
Project/Area Number |
15530057
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水野 紀子 東北大学, 大学院・法学研究科, 教授 (40114665)
|
Keywords | フランス親子法 / 人工生殖 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、フランス法の生命倫理を中心に、資料収集と研究を行うとともに、今年度は日本法についても研究成果をまとめる準備を行った。昨年度末に民法の位置づけとフランス法の生命倫理に関する総論的な論文「人工生殖における民法と子どもの権利」を公表したが、今年度はそれを具体化して日本法の喫緊の課題に従事した。しかし法制審議会の立案作業に加わってまとめた成果は、国会議員の反対によって立法が頓挫したままである。 卵子バンクや精子バンクなどが存在するような生殖子の市場化が行われているアメリカとは、異なる法規制が日本にも必要と考えられるが、アメリカに渡って人工生殖施術を受けた有名人の例や夫の死後の人工授精の裁判がマスコミにとりあげられ、マスコミの論調は、生まれた子の福祉を前面に出して、規制緩和を求めるものが圧倒的である。あらゆる技術を使って子を求める「親」希望者の「権利」と自己決定は、わかりやすい論理であり、さらにすでに出生した子の存在とその福祉を求める要請は、あまりにも圧倒的で誰も否定できない迫力をもつ。それに比して、これから人工生殖で創り出される子の福祉や将来の人生の重さは、考えるのに想像力を必要とするため、マスコミの議論にはのりにくいようである。しかしそのような慎重な観点から発言する必要があると考え、マスコミの取材にも応じ、他分野の学会報告(公共哲学京都フォーラム等)も引き受けるようにした。また具体的な事例として訴訟になった事件について、「死者の凍結精子を用いた生殖補助医療により誕生した子からの死後認知請求を認めた事例ーー高松高裁平成16年7月16日判決評釈」を公表した。
|
Research Products
(1 results)