2005 Fiscal Year Annual Research Report
生命倫理における決定権の構造-フランス法を中心に-
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15530057
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水野 紀子 東北大学, 大学院・法学研究科, 教授 (40114665)
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Keywords | フランス民法 / 生殖補助医療 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、フランス法を中心に、資料収集と研究、および研究成果公表を行うとともに、今年度は日本法についても研究成果を公表した。一昨年度末に民法の位置づけとフランス法の生命倫理に関する総論的な論文「人工生殖における民法と子どもの権利」を公表したが、今年度はそれを具体化して日本法の喫緊の課題に従事した。しかし法制審議会の立案作業に加わってまとめた成果は、国会議員の反対によって立法が頓挫したままである。 また立法が頓挫しているうちに、具体的な事例が訴訟に現れ始めた。昨年度末に「死者の凍結精子を用いた生殖補助医療により誕生した子からの死後認知請求を認めた事例--高松高裁平成16年7月16日判決評釈」を公表したが、その高松高裁判決は、原審である松山地裁平成15年11月12日判決を覆して認知請求を認容したものであった。その後、東京地裁平成17年9月29日判決、東京高裁平成18年2月1日判決と、高松高裁と異なって請求棄却する判決が続いているが、その判決文には私の前記評釈の影響が見られる。本来、伝統的には、肉体に関する決定は、たとえば人身の自由に代表されるように、もっとも強力に固有の「権利」に属する領域であり、その権利行使は「自由」の領域そのものであった。本来、伝統的には、肉体に関する決定は、たとえば人身の自由に代表されるように、もっとも強力に固有の「権利」に属する領域であり、その権利行使は「自由」の領域そのものであった。生殖子を含む人体に関する問題においては、「自由」と「権利」という法学の基本的な概念を用いることが危うくなる。とりわけ生命の誕生においては、生まれてくる子の尊厳を大切に秩序設計すべきであろう。さまざまな法益の対立するその制度設計においては、民法の既存の体系を利用して発想するしかない。本年度はそのような観点から、フランス家族法の諸方面の研究を活字にした。
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Research Products
(6 results)