2003 Fiscal Year Annual Research Report
著作権侵害による損害賠償額の倍額化に関する法制史的・法解釈学的・法政策的研究
Project/Area Number |
15530065
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松川 実 広島大学, 法学部, 教授 (60319027)
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Keywords | 著作権 / 侵害 / 損害賠償 / 倍額 / ドイツ / 懲罰的損害賠償 / 2倍 / 不法行為 |
Research Abstract |
本研究の1年目には、著作権侵害による損害賠償額の倍額化に関する法制史的研究に従事した。 ドイツ・カンマー裁判所(ベルリン)が1910年代、音楽著作権侵害に対し、損害額の倍額化を認める判決を出し、それがその後ドイツでは慣習法となっている。カンマー裁判所が倍額化を認める基礎となったのが、プロイセン音楽鑑定委員会の鑑定書であった。私はこの委員会にイギリス法に精通した人物がいるものと推測し、平成15年夏、ドイツに赴き、19世紀末から20世紀初頭における同音楽鑑定委員会の委員の人物を調査した。その調査の結果、私と同様の研究に従事している弁護士Dr.Rainer Nomineが最近執筆した「Der Koniglich Preuβische Literarische Sachverstandigen-Verein in den jahren 1836 bis 1870,Berlin 2001」及び「Der Koniglich Preuβische Literarische Sachverstandigen-Verein in den jahren 1836 bis 1870-Ein Wegbereiter des deutschen Urheberrechts im Spiegel der Akten des Geheimen Staatsarchivs Preuβischer Kulturbesitz, Berlin, UFITA 2001,497」を発見し、その著作により、私が調査していたプロイセン音楽鑑定委員会の資料は第二次世界大戦における米軍の空襲で全部焼失してしまったことを知り、また、その資料を保管しているはずであったGehein Staatsarchiv Preuβischer Kulturbesitzへの照会によっても、同様の回答を得た。そこで、ドイツ・ミュンヘンのマックス・ブランク知的財産法研究所を訪れ、同様の資料がないか、数日にわたり調査したが、やはり発見することはできなかった。 従って、ドイツにおける音楽著作権侵害による2倍賠償のもともとのアイディアがどこから来ているものか確認することはできなかった。この調査の結果は、現在執筆中の調査報告書に記載している。 H16年度には、著作権侵害による損害賠償額の2倍化に関する法解釈学的及び法政策的な研究に従事し、前年度の調査報告とともに、研究成果を公刊していく予定である。
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