2004 Fiscal Year Annual Research Report
多様化するデザイン創作活動の成果に対する知的財産保護
Project/Area Number |
15530077
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
茶園 成樹 大阪大学, 大学院・高等司法研究科, 教授 (30217252)
|
Keywords | デザイン / 意匠 / 類似 / 秘密意匠 |
Research Abstract |
本年度においては、昨年度に引き続き、企業におけるデザイン創作活動の多様化の内容と方向、及び多様化するデザイン創作活動の成果が現行のデザイン保護法制において的確に保護されているかについての情報収集を行った。そして、収集した情報を分析することにより、現行制度における問題点を確認し、その解決策の検討を開始した。そのための情報として、諸外国、とりわけEUの法制の検討を深めた。 企業においては、デザイン創作をブランド構築の一環として捉える傾向が強まっているが、単一の物品ではなく、複数の物品に統一的なデザインを施して、企業のブランドイメージの確立につなげようとする動きがある。そのために、登録意匠権の保護範囲を画する「類似」概念には、不明確であるという問題のほかに、統一的なデザインの保護にとって十分ではないという問題があることの批判がなされている。また、関連する意匠の創作の保護に、現行の関連意匠制度が的確に対応していないとの問題があることを確認した。さらに、模倣品の問題が深刻化していることから、秘密意匠制度が活用されるようになっている状況にあり、この制度の拡充が要請されていることを確認した。 以上の問題点を、現在議論が進められている意匠法の改正とすりあわせると、やはり最も解決が求められているのは、意匠権の保護範囲の明確化、そして拡大であること、そして、類似概念に関する裁判例の検討により、問題の根本的な原因が意匠法が保護対象である意匠をどのようなものとして捉えているのかが明らかにされていないことを確認した。その解決策を模索するためにEUの法制の検討を行い、我が国も、EUのように、デザインをマーケッティング・ツールとして捉え、保護範囲をデザインが需要者に及ぼすインパクトの観点から画するようにすべきであるとの暫定的な結論を得た。 高齢化社会への対応という側面を有するユニバーサル・デザインについては、現行のデザイン保護制度との関係を検討したが、今のところは、ユニバーサル・デザイン特有の問題が生じていないことを確認した。 現行意匠法では保護が困難な情報デザインについては、その創作活動及び諸外国の保護制度に関する情報収集を行った。いずれの国も、遷移に創作の重点があること等の情報デザインの特徴に対応した保護制度を設けてはおらず、これまでの枠組みを超えた新たな保護制度の構築が必要となっていることを確認した。
|
Research Products
(2 results)