2004 Fiscal Year Annual Research Report
「共同体」的ニーズの分類・比較・評価のための枠組みの構築の研究
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15530084
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
辻 康夫 北海道大学, 大学院・法学研究科, 教授 (20197685)
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Keywords | 共同体 / 自由主義 / 民主主義 |
Research Abstract |
本研究は、今日「共同体」の名の下に論じられる価値・ニーズを分類・整理し、自由民主主義との関係において、評価を加えるための枠組みの構築を目的とし、今日「共同体」をめぐっておこなわれる政治理論上の論争に関して、その内容を概観・整理するとともに、これらの主張と自由民主主義の理論との整合性について考察を加え、以下の知見を得た。第一に、今日の代表的な議論を、少数派社会への帰属の尊重をめぐる議論、自治・政治参加の活性化をめぐる議論、市場の論理の抑制の主張、国家・政治共同体への情緒的愛着をめぐる議論に分類して考察したが、その具体的ニーズに即して見た場合、相互に大きく異なるものである。第二に、これらの議論を評価するうえで、J.ロールズらに代表される自由主義理論の枠組の有効性は限定されたものである。ロールズの議論は伝統的価値観の強制の不当性など、一定のトピックに関しては明確な評価を行えるが、「共同体的価値」が、自由民主主義体制の機能の改善や、社会的基礎善の平等な配分の実現のために主張される場合には、共同体による追求が許容される場合がある。上述の主張の多くは、こうした論理で正当化される余地を残しており、ロールズの基準によっては明確な結論を出しにくい。第三に、その帰結として、これらの議論の評価のためには、議論の幅を広げ、自由民主主義体制の機能にはたす「共同体」的社会関係の役割をめぐる知見を取り入れなければならず、議論の深化のためには、とくに20世紀を通じて蓄積されてきた民主主義をめぐる比較政治学・政治史学・政治経済学の知見の利用が不可欠である。
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Research Products
(3 results)