2004 Fiscal Year Annual Research Report
戦間期「洋行インテリ」の情報共同体--インターネットを活用した情報政治学
Project/Area Number |
15530087
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
加藤 哲郎 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (30115547)
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Keywords | 洋行 / 知識人 / ゾルゲ事件 / ベルリン / OSS / 象徴天皇制 / 国崎定洞 / 毛沢東 |
Research Abstract |
第二年度である.平成16年度は、米国の日系移民史・日本人コミュニティ史に集中的に取り組んだ。デンバー大学及びワシントン国立公文書館・議会図書館の調査は、本研究の本来の目的であるコロラド州日本人コミュニティについて貴重な資料を得たほかに、思わぬ副産物をももたらした。一つは、1925-28年にデンバー大学留学中の日本人学生名簿のなかに、1930年に上海でリヒアルド・ゾルゲに尾崎秀実を紹介した謎の米国共産党員鬼頭銀一と、30年代に日本共産党野坂参三のアメリカからの対日工作を助手として助けるジョー小出(本名鵜飼宣道)の二人が、同級生として共に入っていることを発見した。野坂参三らの『国際通信』と、尾崎秀実らのゾルゲ事件が、人的ネットワークで重なり合ったのである。 鬼頭銀一・ジョー小出の軌跡を追って、ご遺族にも連絡を取り、聞き取り調査を行った。そこで、ジョー小出が戦時中に日本人強制収容所から米国戦時情報局(OSS)の対日諜報宣伝(MO、ブラック・プロパガンダ)に加わったことを知り、米国国立公文書館のOSS資料を調査して、真珠湾攻撃直後の1942年春に米国心理戦共同委員会で「天皇を平和のシンボルとして利用する」日本プランが作成されていたことを発見した。「象徴天皇制」について、これまで知られていなかつた米国側重要文書の発見で、邦字・英字新聞で大きく報じられた。それは、雑誌『世界』2004年12月号に発表され、近く単行本になる予定である。
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