2005 Fiscal Year Annual Research Report
戦間期「洋行インテリ」の情報共同体--インターネットを活用した情報政治学
Project/Area Number |
15530087
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
加藤 哲郎 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (30115547)
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Keywords | 洋行 / 知識人 / アメリカ / OSS / 情報 / ドノヴァン文書 / 太平洋戦争 / 天皇制 |
Research Abstract |
第3年度である平成17年度は、中間的成果を、単著及びいくつかの論文のかたちで発表することができた。 平成16年度のアメリカでの調査で、米国戦略情報局(OSS)の資料の中に、1942年6月に作成された「日本計画」という戦後日本構想を発見し、それが開戦半年のミッドウェイ海戦段階で早くも「天皇を平和の象徴として利用する」「皇居を爆撃しない」「日本人に戦後の自由と繁栄を保証する」等々の重要な内容を含んでいることを『象徴天皇制の起源 米国の心理戦「日本計画」』(平凡社新書)として発表した。 OSSは、戦後CIAの前身の米国初の本格的情報機関であったが、戦間期における米国・英国・ソ連・中国・日本の情報戦・情報政治のあり方を、全体として概観し比較することができた。 特に重要なのは、狭い意味での諜報活動よりも、米国OSS調査分析部(RA)で行われた社会科学・人文科学の戦争動員であった。経済学・政治学・社会学から民族学・心理学・美学にいたる延べ2000人もの学者を動員し、敵国日本・ドイツ・イタリアのみならず、アジア・アフリカ諸国についても各国の政治・経済・地理から国民性・習俗までを学際的に研究し、戦後のいわゆる地域研究の原型をつくっていた。戦後に著名になる学者たち、W・W・ロストウ、A・シュレジンジャーJr、W・レオンチェフ、S・ヒューズ、E・シルズ、H・マルクーゼ、F・ノイマン、P・スウィージー、J・K・ファアバンク、J・F・エンブリーらの戦争協力の証拠が署名・無署名で多数含まれていた。ほとんどが当時の機密文書で全面公開はようやく2001年であった。 その中核を成す「ドノヴァン長官文書」のマイクロフィルムが、日本では国会図書館にもなく、一橋大学図書館と早稲田大学政経研究所にのみ所蔵されていることも判明し、そこには本研究で言う日本人「洋行インテリ」を対日戦に利用した記録も入っていた。
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Research Products
(7 results)