2003 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
15530101
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
鈴木 基史 京都大学, 大学院・法学研究科, 教授 (00278780)
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Keywords | 国際平和 / 安全保障 / 国際制度 / 民主的平和 / バーゲニング / 国際協調 / 国際関係理論 / 不確実性 |
Research Abstract |
現代国際関係学において多くの研究者が関心を寄せている研究プログラムに国際制度論と民主的平和論がある。国際制度論には、政策協調を促進する制度の諸機能、制度の法制度化、制度設計などについて重要な研究が蓄積されてきた。他方、民主的平和論はカントの政治思想に始まり、規範・構造的制約仮説および非対称情報バーゲニング・モデルの適用を経て発展してきている。 これら2つの研究はほぼ独立した過程を経て成長してきたため、それぞれに包摂されている国際関係に対する視座に大きな違いがある。例えば、民主的平和論では異なる国内政治制度がもたらす政策的制約や情報の非対称性が重視される一方、国際制度論ではそうした国家間の非対称性は看過されてきた。反対に、国際制度論では国家間の相互作用や国際的帰結に及ぼす国際制度の影響が分析の核心となっていた一方、民主的平和論では国際制度に対する関心は低かった。 本研究はこれら2つの既存研究プログラムの間隙を縫う。特に、民主的平和論が提起してきた国内政治制度の非対称性を鑑みながら、国際制度の遵守問題について考察する。特に、民主主義国家と権威主義国家の間には国際制度に対するコミットメントおよび政策情報の非対称性が存在することを示し、その結果として、モラルハザードという問題が発生して国際制度の履行を複雑化することを提起する。実際の世界でも国際貿易、環境、核不拡散、人権などの政策領域において民主主義国家と権威主義国家の関係に厳しい対立が散見されるのは、こうした問題があるからかもしれない。 本研究ではプレーヤーの参加・誘因制約をクリアして遵守を確保できる履行装置のあり方について様々な状況を想定して考察する。考察の対象となるケースには、(1)政策が直接観察できない不確実性のケース、(2)国家がリスク回避型の選好を持つケース、(3)複数の国際制度の遵守問題が混在するマルチ・タスクのケース、(4)遵守させようとする国家が複数で異なる選好を持っているケース、(5)潜在的違反国が複数存在するケースが含まれる。民主的平和論と国際制度論を関連付け豊饒化しようとする本研究は国際関係学の理論的発展に寄与するだけでなく、多元的な国際システムにおける政策協調体制の形成にも資することができるであろう。
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Research Products
(1 results)