2005 Fiscal Year Annual Research Report
米国・キューバ関係(1962〜68年)に見る中央部冷戦と周辺部冷戦の交錯
Project/Area Number |
15530112
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小林 誠 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (60257813)
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Keywords | 冷戦 / 国際関係 / 米国 / キューバ / 権力 / デタント / 中央・周辺 |
Research Abstract |
今年度は、3カ年の当該研究の最終年度に当たる。実証研究と理論研究の2本柱からなる研究計画のバランスを取り、来年度における総まとめへの準備を行った。実証研究では、米国務省、大統領府などの公文書を入手し、キューバ外交を分析したが、キューバとメキシコ側の公文書の入手が計画通りには進まず、二次資料に頼る傾向が残った。また、理論研究に比べて遅れがあり、権力の非対称性という理論的観点を生かしながら、実証研究をさらに進めることが今後の課題として残った。いずれにせよ、ヨーロッパのデタントの影響がラテンアメリカに波及したという一方的な流れだけではなく、ラテンアメリカにおけるローカルな冷戦の世界的な波及という意味合いが、従来考えられてきた以上に大きかったことが想定される。 これに比べ、理論研究は計画通り、着実に進めることができた。ウェストファリア体制の根幹である国家の領域的権力が、脱領域化し、国境を超えた権力の投影という従来の外交や戦争のとらえ方以上に、権力作用が国境を超えて制度化されていることが理論化された。これこそが、冷戦の中央部つまりヨーロッパ正面と、冷戦の周辺部つまりここでは米国・キューバ関係とのねじれを生み出すメカニズムであり、同時に、そのねじれが起きたことこそが、権力の脱領域化をもたらしたと言える。これが今日のグローバリゼーションと呼ばれる現象の最も大きな政治的起源の一つにほかならない。こうした理論的見地を元に、『アソシエ』に2本の論文を掲載した。 以上の実証と理論の研究をさらにすりあわせることを、来年度の作業としたい。
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Research Products
(3 results)